2026年2月21日(日本時間22日)、ラスベガスのT-モバイル・アリーナで平岡アンディ選手の世界戦が実現します。
昨年11月の延期を経て、ついに決まった平岡アンディ選手の次戦は、WBA世界スーパーライト級王者ゲーリー・アントゥアン・ラッセルへの挑戦です。平岡アンディ選手の世界戦はいつなのかと気になっていた方も多いと思いますが、2月21日にラスベガスで、ついにその瞬間がやってきます。
この試合は平岡アンディ選手に勝機が十分にあると評価します。
鍵は「体格差を活かして12ラウンドすべてで王者に的を絞らせないこと」です。
平岡選手はラッセルに対してリーチ+13cm、身長+4cmという明確な身体的優位性に加え、陸上競技で培った圧倒的な有酸素能力を持っています。12ラウンドの長丁場で、この体格とスタミナの差を最大限に活かせれば勝てる。一方で、ラッセルのKO率94%が示す破壊力とパワーで押し込まれる展開になると厳しい。勝つ確率は50%と見ています。
私は日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)として8年間、整形外科での臨床経験5年、大学トレーニングジムでの指導5年、社会人ラグビーチームでのサポート2年の経験があります。
この記事では、両選手の身体能力を専門的に分析し、2月21日の試合展開を予想します。
WBA世界スーパーライト級タイトルマッチ 試合基本情報
開催日時: 2026年2月21日(土)(日本時間2月22日(日)11:00〜)
会場: T-モバイル・アリーナ(ラスベガス、アメリカ)
タイトル: WBA世界スーパーライト級タイトルマッチ 12回戦
配信: DAZN
同興行メイン: ライアン・ガルシア vs マリオ・バリオス(WBC世界ウェルター級タイトルマッチ)
試合の歴史的意義
この試合で平岡選手が勝利すれば、1992年4月に平仲明信さんがWBA世界スーパーライト級王座を獲得して以来、約33年10ヶ月ぶり、日本人4人目のスーパーライト級世界王者が誕生します。しかもラスベガスという世界ボクシングの聖地での戴冠となれば、その価値は計り知れません。
注目ポイント
- 24戦全勝の無敗挑戦者 vs 94%KO率の破壊王:全勝レコード同士の激突
- サウスポー vs サウスポー:両者ともに左構えの技巧派対決
- リーチ差13cm:平岡のリーチ188cm vs ラッセルの175cm
- 陸上エリートの持久力 vs 五輪出場の爆発力:異なるアスリート特性の激突
- ラスベガスでの世界挑戦:DAZNを通じた世界配信、日本ボクシング界の威信をかけた一戦
- 延期を乗り越えた決戦:2025年11月の予定が延期され、仕切り直しの一戦
両選手の基本データ比較
平岡アンディ(ひらおか アンディ)
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 本名 | 平岡アンディ・ジャスティス |
| 生年月日 | 1996年8月8日 |
| 年齢 | 29歳(試合時) |
| 身長 | 182cm(6’0″) |
| リーチ | 188cm(74″) |
| 国籍 | 日本(父:ガーナ系アメリカ人、母:日本人) |
| 出身 | 神奈川県横浜市 |
| 所属 | 大橋ボクシングジム |
| 戦績 | 24勝(19KO)無敗 |
| KO率 | 79% |
| 階級 | スーパーライト級(63.5kg) |
| スタイル | サウスポー |
| 経歴 | 横浜高校陸上部(中長距離で国体出場)、東洋大学からオファーあり |
ゲーリー・アントゥアン・ラッセル(Gary Antuanne Russell)
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| ニックネーム | “The Last” |
| 生年月日 | 1996年6月14日 |
| 年齢 | 29歳(試合時) |
| 身長 | 178cm(5’10″) |
| リーチ | 175cm(68.9″) |
| 国籍 | アメリカ |
| 出身 | キャピトルハイツ、メリーランド州 |
| 戦績 | 18勝(17KO)1敗 |
| KO率 | 94% |
| 平均試合ラウンド | 3.7R |
| 階級 | スーパーライト級(63.5kg) |
| スタイル | サウスポー |
| 経歴 | 2016年リオ五輪出場(ライトウェルター級)、兄は元WBC世界フェザー級王者ゲーリー・ラッセルJr |
物理的優位性の比較
| 項目 | 平岡アンディ | ラッセル | 有利な選手 |
|---|---|---|---|
| 年齢 | 29歳 | 29歳 | 互角 |
| 身長 | 182cm | 178cm | 平岡(+4cm) |
| リーチ | 188cm | 175cm | 平岡(+13cm) |
| KO率 | 79% | 94% | ラッセル(+15%) |
| ハンドスピード | 高速 | 高速 | 互角 |
| 移動スピード | 高速 | 高速 | 互角 |
| 経験(試合数) | 24試合 | 19試合 | 平岡(+5試合) |
| 無敗記録 | 24戦全勝 | 18勝1敗 | 平岡(無敗) |
| 国際経験 | 国内中心 | 全試合米国 | ラッセル(本場の経験) |
数字から見える真実:
平岡選手は身長で4cm、リーチで13cmという圧倒的な物理的アドバンテージを持っています。
この13cmのリーチ差はスーパーライト級では異例の数値です。
一方、ラッセルはKO率94%という規格外の破壊力を持ち、プロ19試合のうち17試合をKOで終わらせています。
平均試合ラウンドが3.7Rというのは、ほとんどの対戦相手が前半で沈んでいることを意味します。
注目すべきは、ハンドスピードと移動スピードについては両者ほぼ互角に見えるということです。
両選手とも29歳という身体能力のピーク期にあり、パンチの初速やリングを動き回るスピードには大きな差は感じられません。つまり、スピード勝負では決着がつかない可能性が高く、それ以外の要素 ―― 体格差、スタミナ、パワー ―― が勝敗を分ける鍵になると考えます。
平岡アンディの実力分析:24戦全勝の軌跡
バロッソ戦(2024年9月3日)- 9RTKO勝利で世界挑戦権獲得
平岡選手の真価を測る上で最も重要な試合が、WBA世界スーパーライト級暫定王者イスマエル・バロッソとの挑戦者決定戦です。
試合データ:
- 結果:9R2分58秒TKO勝利
- 6ラウンドに右フックでダウンを奪取
- 8ラウンドにバッティングで右目下をカット
- 9ラウンドにダウンを2度奪い、バロッソ陣営が棄権
この試合の価値:
バロッソは41歳のベテランとはいえ、WBA暫定王者であり「一発の破壊力はこの階級でNo.1」と評される強打者でした。平岡選手はこの強打者に対して、長いリーチを活かしたジャブで距離をコントロールし、バロッソの大振りパンチをバックステップで完全に外しました。ボクシングメディアも「ほぼ完璧な内容での勝利」と評価しています。
平岡選手の強み(バロッソ戦から見えたもの):
- 距離管理能力:バロッソの踏み込みよりも明らかに速いバックステップ
- ジャブの貫通力:長いリーチから放たれるジャブが常に相手を突き刺す
- ダメージからの回復力:8Rにカットを負っても9Rで逆にダウンを2度奪う精神力
- フィニッシュ力:チャンスを逃さず連打で仕留める決定力
10連続KO勝利の意味
平岡選手は直近10試合すべてをKOで勝利しています。
これはスーパーライト級という中量級において、パンチ力だけでなく正確性、タイミング、試合運びの総合力が高いことを示しています。
平岡選手本人のコメント
「技術、スピード、スタミナ、パンチ力のすべて、総合力で上回りたい」
「ラスベガスで世界戦をやるのが夢だった。やっと実現する」
大橋秀行会長も「攻撃力がある。勝てる相手だと思っている」と強気の姿勢を見せています。
ラッセルの実力分析:94%KO率の破壊王
圧倒的なKO率の秘密
ラッセルのKO率94%は現役世界王者の中でもトップクラスです。
プロ19試合のうち17試合をKOで終わらせ、平均試合ラウンドはわずか3.7R。
つまり、多くの対戦相手が4ラウンドを迎える前に試合が終わっています。
ラッセルのパンチ力の秘密は、サウスポーの左ストレートに集約されます。
2016年リオ五輪に出場した経験を持つラッセルは、アマチュアで培った技術と、プロで磨き上げた破壊力を兼ね備えています。ラッセル家は父がトレーナーを務めるボクシング一家であり、兄のゲーリー・ラッセルJrは元WBC世界フェザー級王者です。幼少期からボクシングの英才教育を受けた基盤が、この驚異的なKO率を支えています。
バレンズエラ戦(2025年3月)- 判定勝利でWBA王座獲得
試合データ:
- 結果:ユナニマス判定勝利(12ラウンド)
- 相手:ホセ・バレンズエラ(元WBA暫定王者)
この試合では初めて12ラウンドのフルラウンドを戦い、判定勝利でWBA世界スーパーライト級王座を獲得しました。KO決着ではなかったことは、ラッセルが12ラウンドの長丁場でもしっかり戦えることを証明した一方で、「KOできなかった」という見方もできます。
プエロ戦(2024年6月)- 唯一の敗北
試合データ:
- 結果:スプリット判定負け
- 相手:アルベルト・プエロ(ドミニカ共和国、サウスポー)
ラッセルの唯一の敗北は、WBC暫定王座決定戦でのプエロへのスプリット判定負けです。ここで注目すべきは、プエロもサウスポーであったという事実です。つまり、ラッセルは「サウスポーとの対決で敗北した」経験を持っています。同じくサウスポーの平岡にとって、この事実は非常に大きな意味を持ちます。
ラッセルの強みと弱点
強み:
- 破壊的な左ストレート:KO率94%を支える最大の武器
- 前への圧力と推進力:パワーを生かしてプレッシャーをかけ、相手を追い込むスタイル
- ボクシング一家の技術:父ゲーリー・ラッセル・シニアの指導による基盤
- 五輪経験で培った大舞台での強さ:ラスベガスのホームリングで戦える
弱点:
- サウスポーへの対応:唯一の敗北がサウスポーのプエロ
- 12ラウンドの長丁場:バレンズエラ戦ではKOできなかった
- 平均3.7Rの試合経験:後半ラウンドのスタミナは未知数
- リーチの短さ:175cmはスーパーライト級としては標準以下
JSPOアスレティックトレーナー視点での専門的分析
ここからは、アスレティックトレーナーとしての専門知識を活用し、両選手の身体能力をスポーツ科学のエビデンスに基づいて分析します。平岡選手の優位性と、ラッセル戦における懸念点を合わせてロジカルに解説していきます。
【専門分析①】身長+4cm・リーチ+13cmの力学的優位性
平岡選手の最大の身体的武器は、身長182cm・リーチ188cmという体格です。
ラッセルの身長178cm・リーチ175cmとの差は、身長+4cm、リーチ+13cm。
この数値がどれほどの意味を持つのか、スポーツ科学の研究に基づいて解説します。
エビデンス①:身長とアームスパンがパンチ力の36%を説明する
2025年にPMC(PubMed Central)に掲載された研究では、69名のボクサーを対象に、身体計測値とパンチのインパクト力の関係を調査しました。その結果、身長(Body Height)とアームスパン(Arm Span)がストレートパンチのインパクト力の分散の36%を説明し、フックパンチでは30〜34%を説明することが示されました(Influence of Anthropometric Characteristics and Muscle Performance on Punch Impact, PMC, 2025)。
これを平岡選手に当てはめると:
- ストレートパンチ:平岡選手はリーチ+13cmのため、同じ体重・同じ技術レベルであれば、ストレートパンチのインパクト力で有利
- フックパンチ:同様に、長いリーチが力の伝達に寄与
エビデンス②:リーチがもたらす「安全距離」の確保
リーチ差13cmは、平岡選手がラッセルのパンチの射程外から攻撃できる距離を意味します。
具体的には:
- 平岡選手のジャブの最大到達距離:約188cm
- ラッセルのジャブの最大到達距離:約175cm
- 差:13cm = ラッセルのパンチが届かない「安全な距離」が存在
バイオメカニクスの観点から、ボクサーのパンチは「最適インパクト距離」で最大の力を発揮します。
平岡選手はラッセルの最適インパクト距離の外側に立ちながら、自身のジャブや左ストレートを打つことが可能です。
MDPI Applied Sciences(2025年)に掲載された研究では、パンチの「有効質量(Effective Mass)」は身体質量をどれだけ効率的にパンチに乗せられるかで決まるとされています。長いリーチは加速距離を確保できるため、パンチの最終速度を高める上で有利に働きます。
実戦での意味
バロッソ戦で平岡選手が見せた「バロッソの踏み込みよりも断然速いバックステップ」は、このリーチアドバンテージと連動しています。平岡選手は一歩下がるだけで相手のパンチの射程外に出られるため、エネルギー消費を最小限に抑えながらディフェンスができます。
身長+4cmも見逃せません。高い位置からジャブを放てるため、サウスポー同士の対決において角度のアドバンテージが生まれます。ラッセルは自分より長い相手を見上げながら距離を詰めることになり、普段のリズムとは異なる戦い方を強いられます。
結論:身長+4cm、リーチ+13cmの体格差は、平岡選手がラッセルの94%KO率の脅威を「距離」で無力化できる可能性を示しています。この試合の最大の勝因になりうる要素です。
【専門分析②】陸上競技バックグラウンドが生むスタミナ・有酸素能力の優位性
平岡選手のもう一つの大きな武器は、陸上競技で培った有酸素能力です。
横浜高校時代に1500m走と5000m走で国体出場し、箱根駅伝の名門・東洋大学からオファーを受けるほどの持久力の持ち主です。中学時代には全日本中学校陸上競技選手権大会の3000m走で6位に入賞しています。
この経歴がボクシングにどれほどの意味を持つのか、運動生理学の研究に基づいて解説します。
エビデンス③:ボクシングのエネルギー供給の77%は有酸素代謝
PubMedに掲載された研究では、3ラウンド×2分のボクシングにおける代謝プロファイルを調査した結果、有酸素代謝が全体のエネルギー供給の77%を担っていることが示されました(Davis et al., VO2 Requirements of Boxing Exercises)。
さらに、「ラウンド数が多いほど有酸素系への負担が増大する」ことが報告されています。
これは12ラウンド制のプロボクシングにおいて、有酸素能力が試合の後半に決定的な差を生むことを意味します。
エビデンス④:VO2がラウンド中にVO2maxの90%以上に達する
同じ研究では、ラウンド中の酸素消費量(VO2)はラウンドに関係なく、VO2maxの90%以上に達することが示されています。つまり、ボクシングは常にほぼ最大限の有酸素能力を要求するスポーツです。
エビデンス⑤:有酸素能力はボクサーのランキングと相関する
ResearchGateに掲載された研究「Aerobic Capacity is Correlated with the Ranking of Boxers」では、第1・第2換気閾値でのランニングスピード、VO2max、最大酸素脈がボクサーのランキングと中程度〜強い相関を持つことが報告されています。
平岡選手の有酸素能力の推定
陸上の5000m走で国体出場レベルの選手のVO2maxは、一般的に65〜75 ml/kg/minと推定されます。これはエリートボクサーの平均値(49〜65 ml/kg/min)を大幅に上回る数値です。
一方、ラッセルは平均試合ラウンドが3.7Rであり、12ラウンドのフルラウンドを戦った経験はバレンズエラ戦のみです。ラッセルの有酸素能力は「未知数」であり、後半ラウンドでのパフォーマンス維持能力は平岡選手に及ばない可能性が高いと考えられます。
Boxing Scienceの知見:回復力の重要性
Boxing Scienceのコンディショニングメソッドでは、「有酸素代謝はラウンド間の回復をも制御しており、この系統を包括的に発達させることで、各ラウンドにより多くのエネルギーを持って臨むことができる」と報告されています。
つまり、有酸素能力が高い選手は:
- ラウンド中の高強度運動を持続できる
- ラウンド間の1分間のインターバルでより効率的に回復できる
- 後半ラウンドでもパンチのスピードと正確性を維持できる
結論:平岡選手の陸上競技で培った有酸素能力は、12ラウンドの長丁場において、ラッセルに対して決定的な優位性をもたらします。特に7R以降、ラッセルのスタミナが低下し始めたとき、平岡選手の持久力が試合の流れを変える可能性が高いです。
【専門分析③】懸念点:ラッセルのパンチ力と体格パワーを生かした推進力
ここまで平岡選手の優位性を分析してきましたが、アスレティックトレーナーとして公平に評価するならば、ラッセルの身体能力には無視できない懸念点があります。
それは「パンチ力と体格パワーを生かした推進力」です。
エビデンス⑥:パンチ力はハンドベロシティと最も相関する
2009年のRingside World Championshipで39名のアマチュアボクサーを対象に行われた研究では、パンチ力はハンドベロシティ(拳の速度)と最も強い相関を示した(フック:R² = 0.380、ストレート:R² = 0.391、ともにp < 0.001)ことが報告されています。
先述の通り、ハンドスピードは両者ほぼ互角と見ています。しかし、パンチ力 = 拳の速度 × 有効質量(体重の乗り具合)です。ここで重要なのが有効質量(Effective Mass)の概念です。
ラッセルのパンチ力が脅威である理由
MDPI Applied Sciences(2025年)の研究では、パンチの力は「床 → 足 → コア → 肩 → 腕 → 拳」という運動連鎖(キネティックチェーン)によって生成されるとされています。
ラッセルの驚異的なKO率94%は、以下の身体特性に支えられています:
- コンパクトな体格がもたらす有効質量の高さ:身長178cm・リーチ175cmというコンパクトな体格は、実はパンチにおいて有効質量の伝達効率が高いことを意味します。腕が短い分、力のロスが少なく、体重をダイレクトにパンチに乗せやすい。同じスーパーライト級のリミット63.5kgでも、短い腕に体重が集約されることで「質量の凝縮」が起きます
- 前への推進力:ラッセルは圧力型のファイターです。前に踏み込みながらパンチを打つスタイルは、体重移動の力をパンチに上乗せできるため、通常のパンチよりもインパクトが大きくなります。キネティックチェーンの観点から、前方への体重移動は「床→足」の起点の力を増幅させます
- ボクシング一家の英才教育:幼少期からの技術的基盤により、キネティックチェーンの効率が極めて高い。INSEPの研究(Frontiers in Sports and Active Living, 2020年)でも、エリートボクサーは3種類すべてのパンチでより大きな力をより高い速度で生成したことが示されています。ラッセルの技術的熟練度は、94%というKO率がそのまま証明しています
平岡選手にとっての最大の懸念
リーチ+13cmの「安全距離」は、あくまで平岡選手が距離をコントロールできている場合にのみ機能します。
ラッセルのパワーと推進力によって距離を潰され、接近戦に持ち込まれた場合:
- リーチの長さが逆にデメリットになる(近距離ではリーチが長い方がパンチを打ちにくい)
- ラッセルの凝縮されたパワーが至近距離で直撃するリスクが高まる
- ラッセルの前への圧力を受け続けることで、平岡選手のスタミナが予想以上に消耗する
結論:ラッセルのKO率94%は単なる数字ではなく、コンパクトな体格から生まれる有効質量の高さ、前方への推進力、幼少期からの技術的基盤に裏付けられた「構造的なパンチ力」です。平岡選手が距離を維持できなければ、この破壊力が試合を一瞬で終わらせるリスクがあります。
試合展開シナリオ予想と最終予想
アスレティックトレーナーとして、両選手の身体能力を踏まえた試合展開を予想します。
予想される試合展開
前半(1〜4R):
- 両者サウスポーのため、前足(右足)の位置取りの攻防が展開される
- ラッセルが前への圧力をかけ、得意の左ストレートを狙う
- 平岡選手はリーチ+13cmを活かしたジャブで距離をコントロール
- ラッセルの左ストレートが何度か飛ぶも、平岡のバックステップで空振り
- 最も危険な時間帯。ラッセルのパワーと推進力が最大限に発揮される序盤を、平岡選手が距離を保って凌げるかが最初の分岐点
- 平岡選手が距離感を掴み始め、的を絞らせない動きでラッセルを翻弄できれば勝機が広がる
- スコア:2-2または3-1で平岡
中盤(5〜8R):
- 平岡選手の有酸素能力が発揮され始める
- ラッセルの圧力がやや弱まり、踏み込みの鋭さが低下
- 平岡選手がジャブに加えて左ストレートをボディと顔面に散らし始める
- 12ラウンドすべてで的を絞らせないフットワークが機能し、ラッセルにクリーンヒットを許さない
- 7〜8Rで平岡のボディショットが効き始める
- 逆に、ここまでにラッセルのパワーに押されて距離を潰されていると、平岡選手の体格アドバンテージは消え、ラッセルのKO率94%が現実味を帯びる
- スコア:6-2で平岡
後半(9〜12R):
- 距離を維持できていれば、ラッセルのスタミナが明確に低下
- 平岡がプレッシャーを強化し、コンビネーションの手数を増やす
- ラッセルが経験で凌ぐも、手数の差が明確に
- 9〜10Rで平岡の正確な連打によりレフェリーストップ、またはポイントで大差の判定勝利
私の最終予想
平岡アンディ選手の勝利、確率50%
平岡選手が勝つための最大の鍵は、「12ラウンドすべてでラッセルに的を絞らせないこと」です。
身長+4cm、リーチ+13cmの体格差を最大限に活かし、常にラッセルのパンチの射程外から攻撃する。
ラッセルが踏み込んできたらバックステップで外し、サイドに動いてアングルを変える。
この繰り返しを12ラウンド継続できるスタミナが、平岡選手にはあります。
逆に、ラッセルのパワーと推進力に押されて距離を潰される展開になると厳しい。
接近戦に持ち込まれれば、ラッセルのコンパクトな体格から放たれる凝縮されたパンチが直撃するリスクが高まります。
結局のところ、「距離の戦い」を制するのはどちらか。 これが試合の核心です。
観戦ポイント:2月21日に注目すべき5つのポイント
ポイント1:前足(右足)の位置取り
サウスポー同士の対決では、前足を相手の前足の外側に置けるかどうかが主導権を決めます。平岡選手が外側のポジションを取れれば、リーチを最大限に活かした攻撃が可能です。
ポイント2:1〜4Rの距離感
平岡選手がリーチの「安全距離」を確立できるか。ラッセルがパワーで距離を潰して前半勝負に持ち込むか。最初の4ラウンドが試合の行方を左右します。
ポイント3:ラッセルの左ストレート
KO率94%を支える最大の武器です。この一撃が試合を決める可能性があります。平岡選手がどう対応するか注目してください。
ポイント4:5R以降のスタミナ
ラッセルの平均試合ラウンドは3.7R。5R以降に動きが鈍くなるか、逆に12Rを戦い抜く力を見せるか。ここが勝敗の分かれ目です。
ポイント5:平岡が的を絞らせない動きを維持できるか
リーチの長い平岡選手が12ラウンド通してフットワークとジャブで王者に的を絞らせなければ勝機は大きい。逆に足が止まり、ラッセルのパワーに押される展開になった瞬間に試合は動きます。
まとめ:平岡アンディの体格差とスタミナ vs ラッセルのパワーと推進力
2026年2月21日のWBA世界スーパーライト級タイトルマッチ、ゲーリー・アントゥアン・ラッセル vs 平岡アンディ。アスレティックトレーナーとして8年間、多くのアスリートを見てきた私の結論は、「平岡アンディ選手に勝機あり、確率50%」です。
平岡アンディが勝つ展開
体格差を活かして12ラウンドすべてラッセルに的を絞らせないこと。
リーチ+13cm、身長+4cmの距離管理と、陸上競技で培ったスタミナで後半に差をつける。ジャブとフットワークで王者を翻弄し、中盤以降にボディで効かせて判定またはTKO。
平岡アンディが苦しくなる展開
ラッセルのパワーと推進力に押されて距離を潰される展開。
接近戦に持ち込まれると、ラッセルのコンパクトな体格から放たれる凝縮されたパンチが直撃するリスクが高まる。
パワーに押されると平岡選手の体格アドバンテージは消え、ラッセルの術中にはまります。
スピードは互角、決め手は「距離」
ハンドスピードと移動スピードには両者大きな差は見られません。
だからこそ、勝敗を分けるのはスピード以外の要素 ―― 体格差による距離管理、有酸素能力による12ラウンドの持久力、そしてラッセルのパワーによる推進力 ―― です。
この試合の歴史的価値
平岡選手が勝てば、約33年10ヶ月ぶりの日本人スーパーライト級世界王者の誕生です。しかもラスベガスでの戴冠。
DAZN配信で世界中が注目するこの舞台で、日本のボクシングの新たな歴史が刻まれるかもしれません。
大橋ジムにとっても、井上尚弥選手に続く快挙となります。
だからこそ、この試合は面白い。
体格差と持久力で勝負する平岡選手が、ラッセルのパワーと推進力を12ラウンド封じ込められるか。
ボクシングの醍醐味が凝縮された一戦です。
2月21日(日本時間22日)、DAZNの前でお見逃しなく。
私の予想:平岡アンディ選手の勝利、確率50%
個人的には、陸上競技出身という異色の経歴を持つ平岡選手が、スーパーライト級という日本人には壁の高い階級で歴史を塗り替える瞬間を、心から楽しみにしています。
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執筆者情報
エビナ(Ebiちゃん)
- 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
- 健康運動指導士
- トレーナー歴8年(整形外科5年、大学トレーニングジム5年、社会人ラグビー2年)
- ブログ: Ebi LIFE | えびちゃんの気ままライフ
- URL: https://ebi-life.com/
- 専門分野: アスレティックトレーニング、スポーツ科学、バイオメカニクス、運動生理学
ブログコンセプト: ウイスキー・ゲーム・スポーツ好きのアラサーパパブロガーのライフスタイルブログ。スポーツ記事では専門知識を活かした科学的で深い分析を提供しています。家族(妻、長女5歳、長男4歳)と共に、人生を楽しみながら情報発信中。
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注意事項: この記事の分析は、執筆時点での情報と専門知識、最新のスポーツ科学研究に基づいています。試合結果や選手の状態は予想と異なる場合があります。
参考文献:
- Influence of Anthropometric Characteristics and Muscle Performance on Punch Impact (PMC, 2025)
- Biomechanics of Punching—The Impact of Effective Mass and Force Transfer on Strike Performance (MDPI Applied Sciences, 2025)
- VO2 Requirements of Boxing Exercises (Davis et al., PubMed)
- Aerobic Capacity is Correlated with the Ranking of Boxers (ResearchGate)
- Biomechanical Analysis of the Cross, Hook, and Uppercut in Junior vs. Elite Boxers (Frontiers in Sports and Active Living, 2020)
- Conditioning for Boxing: The Boxing Science Method (Boxing Science)




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