2026年2月13日(現地時間)、ミラノ・コルティナ冬季オリンピックのスノーボード男子ハーフパイプ決勝が、リヴィニョ・スノーパークで行われました。
前回の北京オリンピックで金メダルを獲得した平野歩夢選手(27歳・TOKIOインカラミ)は、約1ヶ月前に骨盤骨折という重傷を負いながらもオリンピックの舞台に立ち、実戦初投入のフロントサイドダブルコーク1620(4回転半)とトリプルコーク1440を成功させるという驚異的なパフォーマンスを見せました。
オリンピックの結果は7位。
連覇こそなりませんでしたが、その滑りは骨折した人のものとは到底思えない衝撃を世界に与えました。
平野歩夢選手が骨盤骨折から約1ヶ月で五輪決勝の舞台に立ち、4回転半を含む超高難度ルーティンを完走できた背景には、他の選手を凌駕する3つの身体能力があると私は分析します。
第1に、空中で4回転半という複雑な回転を制御する「コーディネーション(空間認知能力)」。
第2に、ハーフパイプで世界最高レベルとされるエアの高さ(最大約6.9m)を生み出す「下肢の爆発的パワー」。
第3に、骨折の痛みと恐怖を乗り越えて攻めの滑りを貫いた「メンタリティ」です。
これら3つの要素が平野選手の異次元のパフォーマンスを支えており、通常2〜3ヶ月を要する骨盤骨折からの超早期復帰を可能にしたと考えられます。
私は日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)として8年間、整形外科での臨床経験5年、大学トレーニングジム5年、少年サッカーチーム2年、社会人ラグビーチーム2年の経験があります。この記事では、平野歩夢選手のオリンピックでの結果と怪我からの復活劇を振り返り、その身体能力をスポーツ科学、バイオメカニクス、運動生理学のエビデンスに基づいて分析します。
平野歩夢の基本データとプロフィール
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 生年月日 | 1998年11月29日(27歳) |
| 身長/体重 | 165cm / 50kg |
| 出身 | 新潟県村上市 |
| 所属 | TOKIOインカラミ |
| 学歴 | 日本大学スポーツ科学部卒業 |
| 競技 | スノーボード(ハーフパイプ)、スケートボード(パーク) |
| 主な実績 | 冬季五輪3大会連続メダル(銀・銀・金)、X Games優勝、Dew Tour優勝 |
スケートパークを運営する父・英功さんのもとに生まれ、4歳で3つ上の兄の影響でスケートボードとスノーボードを始めました。小学4年でスノーボードメーカー・バートンと契約し、2013年には14歳でX Gamesで史上最年少銀メダルを獲得。幼少期から世界のトップシーンで活躍してきた「生まれながらのスノーボーダー」です。
平野歩夢のオリンピック全成績とメダル獲得歴
| 大会 | 種目 | 結果 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2014年 ソチ五輪 | スノーボードHP | 🥈銀メダル | 15歳74日、冬季五輪日本人最年少メダル・ギネス世界記録 |
| 2018年 平昌五輪 | スノーボードHP | 🥈銀メダル | 2大会連続銀メダル、ショーン・ホワイトに惜敗 |
| 2021年 東京五輪 | スケートボード パーク | 14位 | 夏冬二刀流での五輪出場という快挙 |
| 2022年 北京五輪 | スノーボードHP | 🥇金メダル | トリプルコーク1440成功、96.00点 |
| 2026年 ミラノ・コルティナ五輪 | スノーボードHP | 7位 | 骨折から約1ヶ月で出場、4回転半成功 |
主な大会成績
| 年 | 大会 | 成績 |
|---|---|---|
| 2013年 | X Games | 銀メダル(史上最年少) |
| 2016年 | X Games Oslo | 優勝(日本人初) |
| 2018年 | X Games Aspen | 優勝 |
| 2018年 | BURTON US OPEN | 優勝 |
| 2023年 | Dew Tour | 優勝 |
| 2024年 | Dew Tour | 優勝(ハイエストエア賞も受賞) |
| 2024年 | FIS W杯 カッパーマウンテン | 優勝 |
| 2025年 | FIS W杯 シークレットガーデン | 優勝 |
北京五輪以降も進化を続け、2024-25シーズンもW杯で優勝を重ねるなど、27歳にして世界の頂点に君臨し続けています。
ミラノ・コルティナ2026 男子ハーフパイプ決勝のオリンピック結果
決勝最終順位
| 順位 | 選手名 | 国 | ベストスコア | Run 1 | Run 2 | Run 3 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 🥇 | 戸塚優斗 | 日本 | 95.00 | 91.00 | 95.00 | – |
| 🥈 | スコッティ・ジェームズ | オーストラリア | 93.50 | 48.75 | 93.50 | – |
| 🥉 | 山田琉聖 | 日本 | 92.00 | 92.00 | – | 92.00 |
| 4位 | 平野流佳 | 日本 | 91.00 | 90.00 | 90.00 | 91.00 |
| 7位 | 平野歩夢 | 日本 | 86.50 | 27.50 | 86.50 | 転倒 |
日本勢の圧倒的な強さが光る大会となりました。戸塚優斗選手が95.00点で悲願の金メダルを獲得。
3度目のオリンピックで頂点に立ち、表彰式では男泣きする姿が印象的でした。
山田琉聖選手が銅メダル、平野流佳選手も4位と、日本のハーフパイプ王国としての底力を世界に示しました。
平野歩夢の決勝3本のラン
1回目: フロントサイドダブルコーク1620(4回転半)に挑戦。しかし着地で転倒し、27.50点。
骨折の痛みを抱えながらも、初めから最高難度に挑む攻めの姿勢を見せました。
2回目(ベストラン): 渾身のルーティンを披露しました。
- スイッチバックサイドダブルコーク1260
- キャブダブルコーク1440
- フロントサイドダブルコーク1620(4回転半) ←実戦初投入
- ダブルコーク1260
- フロントサイドトリプルコーク1440
練習での調整が間に合わず「ぶっつけ本番」で投入した4回転半を見事に成功させ、さらにトリプルコーク1440で締めくくる超高難度ルーティンを上から下まで完走。86.50点をマークしました。
3回目: さらに攻め、骨折の原因となったダブルコーク1260クリップラージャパングラブを敢行。着地しきれず転倒となりましたが、最後まで攻めの姿勢を一切崩しませんでした。
採点への議論
2回目の86.50点という得点には、国内外から疑問の声が上がりました。NHK解説の青野令氏は「いや~、からい」とコメントし、海外のファンからも「なぜアユム・ヒラノのランがたった86点なのか?」という声が噴出。4回転半とトリプルコーク1440を含む世界最高レベルの構成を完走したにもかかわらず、90点に届かなかった採点は大きな議論を呼びました。
平野歩夢の怪我:骨盤骨折からオリンピック復帰までの全経緯
今回のミラノオリンピックを語る上で欠かせないのが、平野歩夢選手の怪我からの復帰ストーリーです。
ここでは、骨折から五輪出場までの経緯を時系列で詳しく追います。
怪我の瞬間:W杯ラークス・オープンでの転倒
2026年1月17日、スイス・ラークスで開催されたFIS W杯第5戦(ラークス・オープン)の決勝で、平野選手は悲劇に見舞われました。1本目の3つ目のトリック、フロントサイドダブルコーク1260クリップラージャパングラブ——2025年12月のW杯開幕戦で成功させて優勝した得意のオリジナルトリックでしたが、約1ヶ月ぶりの実戦となったこの大会では約7メートルの高さから落下。板が折れ曲がるほど激しく雪面に叩きつけられました。
顔面付近と下半身を強打し、鼻と口付近から大流血。
自力で起き上がってパイプの下までたどり着いたものの、2本目を棄権しました。
五輪開幕まで約1ヶ月を切ったタイミングでの悲劇でした。
診断結果:複数箇所の骨折
帰国後の検査で判明した怪我の全容は、想像以上に深刻なものでした。
診断内容:
- 骨盤の右腸骨骨折(腸骨は骨盤の最上部に位置する左右一対の大きな骨。大臀筋、中臀筋、腸腰筋などの重要な筋肉が付着する場所)
- 鼻骨骨折
- 右膝の重度打撲(膝が通常の2倍に腫れ上がった状態。「いまだに感覚がない」と本人が語るほどの深刻さ)
帰国直後は車椅子と松葉杖が必要な状態で、平野選手自身も「終わったと思った」と振り返っています。
通常の復帰期間との比較
| 項目 | 一般的な骨盤骨折 | 平野歩夢のケース |
|---|---|---|
| スポーツ復帰目安 | 2〜3ヶ月 | 約1ヶ月 |
| 安静期間 | 4〜6週間 | 約2週間 |
| リハビリ期間 | 4〜8週間 | 約1〜2週間 |
| 復帰時の状態 | 完全回復後 | 痛み止めとアドレナリンで痛みを抑えて出場 |
日本整形外傷学会の解説によれば、骨盤骨折からのスポーツ復帰には通常2〜3ヶ月を要します。
平野選手は約1ヶ月で五輪の決勝に立ちました。
これは医学的に見ても異例中の異例です。
リハビリと復帰までの道のり
平野選手の復帰には、綿密な医療サポート体制が不可欠でした。
医療チームの体制:
- スポーツドクター: 定期的な画像診断で骨癒合の進行を厳重にチェック
- 理学療法士: 個別最適化されたリハビリプログラムの策定と実施
- 栄養士: 骨の回復を促進するための栄養管理
受傷から約3週間後の2月7日、平野選手は雪山に復帰しました。
3日間の公式練習を経て、2月11日にハーフパイプ予選を迎えます。
予選前日の調整スケジュール:
- 朝: ストレッチと軽いジョグで身体を温める
- 午前: ハーフパイプでの滑走感覚の確認
- 昼過ぎ: 理学療法士によるケアとマッサージ
- 夕方: 短時間の集中練習
痛みとの戦い:骨折を抱えたままの出場
平野選手は現地入り後、骨折の痛みについてこう語っています。
「股関節のところ、腸骨というところを骨折している。けが明けで痛みとかもある状態なので、練習の中でもやりきれない部分や痛みが出てしまう方向もあって、それと戦いながら、慎重にあまり無理をせずに滑っているような感じ」
さらに驚くべきことに、「むしろ悪い方向に、ケガが痛んできている感覚がある」と、日を追うごとに痛みが増していたことを明かしています。膝にも依然として違和感が残り、「膝もいまだに感覚がない」という状態でした。
五輪ではドーピング規定により使用できる鎮痛薬にも制限があります。それでも平野選手は「痛み止めとアドレナリンを頼りに」決勝に挑みました。
骨折の影響で本来のスタンスや踏み込みができない状態でも、板のセッティングを調整し、普段とは異なる構成で予選を突破。85.50点で7位通過という結果を残しました。
予選通過後のコメント
予選後、平野選手は次のように語っています。
「色々なことを無にさせていかなきゃいけないというか、怪我のことを考えるのもよくないし、オリンピックっていう先入観を持つことも、気持ち的に普段の自分とズレができてしまう」
「奇跡的。自分でもビックリしている」
怪我のこともオリンピックということも「色々なことを無」にして——この言葉に、平野歩夢というアスリートの精神性が凝縮されています。
JSPOアスレティックトレーナー視点での専門的分析
ここからは、アスレティックトレーナーとしての視点で、平野歩夢選手の身体能力を分析します。
骨折を抱えながらもあの超高難度ルーティンを完走できたのはなぜか。
平野選手が他の選手より何が優れているのか、3つの観点から解説します。
【専門分析①】4回転半を制御する「コーディネーション(空間認知能力)」
平野選手が決勝2回目で成功させた4回転半は、空中で斜め軸の回転を伴いながら合計4.5回転する、
人間の空間認知能力の限界に挑む技です。
トリプルコーク1440でさえ計4回転。4回転半はそのさらに上を行く超高難度技です。
ではなぜ、猛スピードで回転しながら自分がどの方向を向いているかわかるのでしょうか。
スポーツ科学の研究(Science of Falling, 2024)によると、空中で自分の位置を正確に把握する能力(エアセンスと呼ばれます)は、主に3つの感覚の連携で成り立っています。
- 三半規管などの平衡感覚: 回転の速さや方向を感知する、いわば「体内のジャイロセンサー」
- 固有感覚: 目を閉じていても自分の手足がどこにあるかわかる感覚。筋肉や腱のセンサーが脳に情報を送っています
- 視覚: 雪面や空を目で捉えて、空間内の位置を判断する
この3つが高速で連携することで、猛回転中でも「今どの向きか」「いつ着地態勢に入るか」を瞬時に判断できるわけです。しかも、研究では回転を繰り返すことで平衡感覚が鍛えられ、高速回転でもめまいを起こしにくくなることが報告されています(PMC, 2024)。
平野選手が他の選手より優れている点
平野選手は4歳からスケートボードとスノーボードを始め、23年間にわたって空中回転動作を繰り返してきました。
23年分の「回転経験の蓄積」が、平衡感覚と固有感覚を極限まで研ぎ澄ませていると考えられます。
さらに注目したいのが、スケートボードでも東京オリンピックに出場している「二刀流」であるという点です。コンクリートの上と雪の上、環境は違っても空中で回転を制御するという本質は同じです。
2種目での経験が、空間認知能力を二重に鍛え上げていると推測されます。
4回転半は、わずか1.5〜2秒の滞空時間の中で正確に4.5回転を制御しなければなりません。これを骨折した状態で、しかも実戦初投入で成功させた。平野選手のコーディネーション能力が他の選手を圧倒していることの何よりの証拠です。
【専門分析②】世界最高レベルの「エアの高さ」を生む下肢の爆発的パワー
平野選手のもう一つの武器は、ハーフパイプで世界最高レベルのエアの高さです。2024年のDew Tourでは約6.9mのハイエストエアを記録し、北京五輪でも高さ5.5mのエアからトリプルコーク1440を決めています。ビルの2階を超える高さまで飛ぶわけですから、その光景は想像するだけでも圧倒的です。
エアの高さを出すメカニズム
スポーツ科学の研究(Bentham Open Sports Medicine Journal)では、ハーフパイプのエアの高さは「壁を飛び出す瞬間のスピード」で決まると報告されています。では、そのスピードをどう生み出すのか。ポイントは2つの動作です。
①「パンピング」(加速動作): ハーフパイプの壁のカーブ部分で、太ももやお尻の筋肉を使って一気に脚を伸ばし、雪面を強く押すことで加速します。ブランコを漕ぐ時に膝を伸ばすイメージに近いです。
②「ストンピング」(着地動作): 着地の瞬間に衝撃を吸収しながら、すぐに雪面を押し込んでスピードを落とさない動作です。着地で減速すると次のエアが低くなるため、「衝撃に耐える筋力」が非常に重要です。
研究(PMC, 2023)では、この「衝撃に耐える筋力(エキセントリック筋力)」が高い選手ほどジャンプが高くなることが示されています。
平野選手が他の選手より優れている点
平野選手は身長165cm・体重50kgと、スノーボード選手の中でも小柄です。
にもかかわらず約6.9mという世界最高クラスのエアを出しています。
これは何を意味するか。体が軽い分、同じ筋力でもより高く飛べるのです。
ただし、それだけではありません。小柄な体で最大限の力を発揮するには、脳から筋肉への命令の効率(簡単に言えば「体の使い方のうまさ」)が極めて優れている必要があります。
骨盤骨折を抱えた状態でも4回転半に十分なエアを出せたのは、23年間で培った下肢の爆発的パワーと、体の使い方の効率の良さがあったからこそだと分析します。
【専門分析③】骨折の痛みと恐怖を超える「メンタリティ」
3つ目は、少し視点は異なりますが、アスレティックトレーナーとして多くの怪我からの復帰に関わってきた経験から、平野選手の「メンタリティ」について触れたいと思います。
一流アスリートは「痛みとの付き合い方」が違う
スポーツ科学の研究(PMC, 2022)では、「逆境から立ち直る力(レジリエンス)」が高いアスリートほど、パフォーマンスが高く、精神的にも健康であることが報告されています。
さらに興味深いのが、一流アスリートの「痛みへの対処能力」です。
Sports Medicine誌(2025年)の研究では、長年の高強度トレーニングを積んだアスリートは、脳内で痛みを和らげる物質(天然の鎮痛物質)が多く分泌される傾向があることが報告されています。
つまり、トレーニングを重ねること自体が「痛みに強い体」を作るということです。
また、怪我からの復帰には頭の中で技を繰り返しイメージする「イメージトレーニング」が有効であることもわかっています。体を動かせない期間でも、脳内でルーティンを何度も再生することで、復帰後のパフォーマンス低下を最小限に抑えられるのです。
平野選手のメンタリティが他の選手より優れている点
平野選手の決勝でのパフォーマンスを振り返ると、そのメンタリティの凄さが際立ちます。
1回目のランで4回転半に挑んで転倒。骨折している身体で雪面に叩きつけられたわけです。普通の選手であれば、2回目は安全な構成に切り替えるでしょう。しかし平野選手は2回目にも4回転半を組み込み、さらにトリプルコーク1440まで入れた超攻撃的なルーティンを選択しました。
さらに驚くべきは3回目のランです。86.50点で暫定4位につけていた平野選手は、守りに入ればメダル圏内を維持できた可能性があります。しかし彼は、骨折の原因となったまさにその技——ダブルコーク1260クリップラージャパングラブに再び挑みました。「出し切れた」という試合後の言葉には、結果よりも「自分の限界に挑む」ことを選ぶ平野選手の哲学が表れています。
これは単なる「根性」ではありません。
スポーツ科学的に見ると、平野選手は痛みや恐怖を「脅威」ではなく「挑戦」として捉え直す能力が極めて高いと考えられます。
平野選手が予選後に語った「怪我のことを考えるのもよくないし、オリンピックっていう先入観を持つことも、気持ち的に普段の自分とズレができてしまう」という言葉が、それを物語っています。痛みもプレッシャーも「無」にして、ただ目の前の滑りに集中する。この能力こそが、骨盤骨折から約1ヶ月で五輪の舞台に立つことを可能にした、最も重要な要素だと私は考えます。
まとめ:骨折を超えた王者の誇り、そして日本スノーボードの新時代
ミラノ五輪の結果
平野歩夢選手はミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックのスノーボード男子ハーフパイプ決勝で7位という結果に終わり、連覇はなりませんでした。しかし、骨盤骨折から約1ヶ月での五輪復帰、4回転半とトリプルコーク1440を含む超高難度ルーティンの完走は、メダルの色では測れない価値を持つパフォーマンスでした。
アスレティックトレーナーの見解
平野歩夢選手が怪我を抱えながらも超高難度のルーティンを完走できた背景には、以下の3つの要素があります。
- 4回転半を制御するコーディネーション(空間認知能力): 23年間にわたる空中回転経験と、スノーボード・スケートボードの二刀流によるクロストレーニング効果で強化された前庭系・固有感覚の高度な統合能力
- 世界最高レベルのエアの高さを生む下肢の爆発的パワー: 165cm・50kgの小柄な体格で約6.9mのエアを実現する、極めて高い相対的筋パワーと神経筋協調性
- 骨折の痛みと恐怖を超えるメンタリティ: 痛みや恐怖を「挑戦」として認知的に再評価し、目の前の滑りだけに集中できる卓越した精神力
これらは、平野選手が4歳から23年間積み重ねてきたトレーニングと経験の結晶です。「天才」という言葉だけでは片付けられない、長年の努力と鍛錬の結果が、骨折という極限状態でもパフォーマンスを発揮させたのだと考えます。
日本スノーボードの新時代
今大会は、戸塚優斗選手の悲願の金メダル、山田琉聖選手の銅メダル、平野流佳選手の4位と、日本勢がトップ4のうち3枠を占める圧倒的な結果となりました。平野歩夢選手が北京五輪で切り拓いた「トリプルコーク時代」は、後輩たちにしっかりと受け継がれています。
平野歩夢選手へのエール
正直に申し上げると、私はテレビの前で平野選手の2回目のランを見て、涙が出そうになりました。
隣で見ていた妻も「この人、骨折してるんだよね…?」と信じられない表情をしていました。
5歳の娘は「すごい、くるくる回ってる!」と画面に釘付けで、4歳の息子は「いたいの?がんばれ!」と応援していました。
ソチで銀、平昌で銀、北京で金。そしてミラノでは骨折を抱えながら7位。
メダルの数だけが選手の価値ではありません。
平野歩夢選手がミラノの舞台で見せた「生きるか死ぬかの覚悟」での滑りは、間違いなくオリンピック史に刻まれる名シーンです。
試合後、平野選手は今後について「何も考えてない」としながらも「強く、進化していけたら」と語りました。
平野歩夢選手の今後の活躍を、一人のスポーツファン、そして一人のアスレティックトレーナーとして、心から応援しています。
執筆者情報
エビナ(Ebiちゃん)
- 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
- 健康運動指導士
- トレーナー歴8年(整形外科5年、大学トレーニングジム5年、社会人ラグビー2年)
- 専門分野: アスレティックトレーニング、スポーツ科学、バイオメカニクス、運動生理学
ブログコンセプト: ウイスキー・ゲーム・スポーツ好きのアラサーパパブロガーのライフスタイルブログ。スポーツ記事では専門知識を活かした科学的で深い分析を提供しています。家族(妻、長女5歳、長男4歳)と共に、人生を楽しみながら情報発信中。
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注意事項: この記事の分析は、執筆時点(2026年2月15日)での公開情報と専門知識、スポーツ科学のエビデンスに基づいています。選手の怪我の状態やパフォーマンスに関する分析は、公開情報から推察したものであり、実際の診断・治療内容とは異なる場合があります。
Sources
この記事は以下のエビデンスと信頼性の高い情報源に基づいて執筆されました:
ニュースソース:
- 平野歩夢は7位 最後は本音「生きててよかった」連覇ならずも五輪に刻んだ王者の誇り – デイリースポーツ
- 連覇の夢散るも最後まで平野歩夢らしく「生きるか死ぬか」骨折抱え限界挑戦 – デイリースポーツ
- スノーボード平野歩夢、骨折での挑戦もいい経験「無駄なものは何1つない」 – Olympics.com
- スノーボード平野歩夢、怪我のこともオリンピックということも「色々なことを無」にして予選通過 – Olympics.com
- スノーボード平野歩夢、骨折の痛みと戦いながらも「可能性が1パーセントでもあるのであれば」 – Olympics.com
- 平野歩夢が7位で決勝進出「何とかここに立ててる状態」 – Yahoo!ニュース(TBS NEWS DIG)
- 平野歩夢が7位で決勝進出「奇跡的。自分でもビックリ」 – Yahoo!ニュース(デイリースポーツ)
- 戸塚優斗が金メダル獲得!山田琉聖は銅メダル – Olympics.com
- 平野歩夢の採点、海外からも疑問噴出「なぜ86点?」 – THE ANSWER
- 平野歩夢、4年後は「何も考えてない」も「強く、進化していけたら」 – Yahoo!ニュース(デイリースポーツ)
- 「超人平野歩夢」腸骨が折れて膝も倍に腫れ…連覇へ漫画でも無理な復活劇 – Yahoo!ニュース(日刊スポーツ)
- 平野歩夢、骨盤骨折を明かす「可能性あるなら滑る」 – 日本経済新聞
選手情報:
- 平野歩夢 – Wikipedia
- Profile — 平野歩夢 公式web
- Ayumu HIRANO – Olympics.com
- 平野歩夢 | JOC – 日本オリンピック委員会
- ミラノ・コルティナ2026注目選手紹介 平野歩夢 – Olympics.com
スポーツ科学・医学エビデンス:
- Strength and Conditioning Considerations for Elite Snowboard Half Pipe – Bentham Open Sports Medicine Journal
- Associations of eccentric force variables during jumping and eccentric lower-limb strength with vertical jump performance: A systematic review – PMC (PLoS ONE, 2023)
- The Science of “Air Sense” in Sport: How Athletes Know Where They Are While Flipping – Science of Falling (2024)
- Effects of proprioceptive training on sports performance: a systematic review – PMC (2024)
- The sporting resilience model: A systematic review of resilience in sport performers – PMC (2022)
- Human Resilience and Pain Coping Strategies: A Review – Sports Medicine (2025)
- The Association Between Mindfulness and Athletes’ Distress Tolerance – PMC (2024)
トリプルコーク・技術解説:


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