2025年12月17日(日本時間)、ラスベガスのT-モバイル・アリーナで行われたエミレーツNBAカップ2025の決勝戦で、ニューヨーク・ニックスがサンアントニオ・スパーズを124-113で下し、1973年以来52年ぶりとなるチャンピオンシップトロフィーを獲得しました。
そして、この歴史的な優勝の立役者となったのが、ポイントガードのジェイレン・ブランソン選手です。
決勝戦で25得点・8アシストを記録し、NBAカップ全6試合で平均33.2得点、フィールドゴール成功率53.1%、3ポイント成功率46.2%という圧倒的なパフォーマンスでMVPを受賞しました。
「身長185cmと小柄で、ダンクもほとんどしないブランソンが、なぜNBA最高峰のレベルでこれほど活躍できるのか?」そんな疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げると、ブランソン選手は身長・ウィングスパン・垂直跳びといった測定可能な身体能力だけを見ればNBAポイントガード平均レベルで、決して身体的に恵まれた選手ではありません。
しかし、「体重比2.15倍のデッドリフト(181kg)による下半身の圧倒的な筋力」「NBA史上最高レベルと評されるバランス力とボディコントロール」「リムでの60%という異常な成功率を支える高度なレイアップパッケージ」の3つが完璧に融合しており、小柄な体格というハンディキャップを補って余りある競技力を実現しています。
特に、下半身の強さから生まれる「極限のバランス維持能力」が、接触プレーでも崩れないシュートフォームを可能にし、ディープスリーからリムアタックまで高効率で決められる万能性を生み出しています。
私は日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)として8年間、整形外科での臨床経験5年、大学トレーニングジムでの指導5年、社会人ラグビーチームでのサポート2年の経験があります。この記事では、ブランソン選手のNBAカップMVP獲得の身体的要因を最新のエビデンスに基づいて分析し、他のトップポイントガードとの身体能力比較を通じて、「小柄でも支配できる」秘密を専門的に解説します。
エミレーツNBAカップ2025決勝:52年ぶりの歓喜
試合結果とハイライト
試合結果: ニューヨーク・ニックス 124-113 サンアントニオ・スパーズ
2025年12月17日(現地時間12月16日)、ニックスはスパーズとの激闘を制し、1973年のNBAチャンピオンシップ以来52年ぶりとなるトロフィーを獲得しました。
試合は第3クォーター終了時点でスパーズがリードする展開でしたが、ニックスは第4クォーターに35-19という圧倒的なスコアで逆転。最終的に11点差をつけて勝利を収めました。
決勝戦の主要スタッツ
| 選手名 | 得点 | リバウンド | アシスト | FG成功率 |
|---|---|---|---|---|
| ジェイレン・ブランソン | 25 | – | 8 | – |
| OGアヌノビー | 28 | 9 | 3 | 10/17 (58.8%) |
| カール・アンソニー・タウンズ | 16 | 11 | – | – |
| タイラー・コレック | 14 | – | – | (ベンチから) |
| ミッチェル・ロビンソン | – | 15 | – | 10オフェンスリバウンド |
勝利の3つの要因
要因① 第4クォーターの圧倒的支配力
第3クォーター終了時点でスパーズに11点ビハインドだったニックスは、第4クォーターで12-1のランからスタート。35-19という一方的なスコアで試合を決めました。
要因② セカンドチャンス得点の支配
ニックスは23オフェンスリバウンドから32点のセカンドチャンス得点を奪取。ミッチェル・ロビンソンが18分間で10オフェンスリバウンド(計15リバウンド)を記録し、ビクター・ウェンバンヤマを抑え込みました。
要因③ ベンチの爆発的貢献
タイラー・コレック、ジョーダン・クラークソン、ミッチェル・ロビンソンらベンチメンバーが合計で29得点を記録。特にコレックとクラークソンは後半だけで24得点を挙げ、ニックスの逆転劇を支えました。
ジェイレン・ブランソンのNBAカップ成績:圧倒的MVP
NBAカップ全6試合の成績
ブランソン選手は、NBAカップのグループステージから決勝まで、一貫して高いパフォーマンスを発揮しました。
| 項目 | 平均値 |
|---|---|
| 得点 | 33.2 |
| リバウンド | 2.7 |
| アシスト | 5.8 |
| フィールドゴール成功率 | 53.1% |
| 3ポイント成功率 | 46.2% |
| 試合ごとの得点 | 29, 33, 37, 35, 40, 25 |
データソース: Basketball King, NBA.com
特筆すべきポイント:
- トーナメント総得点199点でリーグトップ
- チーム総得点の約34%に貢献
- セミファイナルのオーランド・マジック戦では40得点のMVP級パフォーマンス
- 決勝戦では25得点・8アシストで勝利に貢献
MVP投票結果
ブランソン選手は、20人のメディア投票者のうち19票を獲得し、圧倒的な支持でMVPに選出されました(残り1票はOGアヌノビー)。また、ファン投票でも5票中2票を獲得。
これにより、ブランソンはレイカーズのレブロン・ジェームズ、バックスのヤニス・アデトクンボに続く、史上3人目のNBAカップMVP受賞者となりました。
ジェイレン・ブランソンのプロフィールと2024-25シーズン成績
基本情報
| 項目 | データ |
|---|---|
| 生年月日 | 1996年8月31日 |
| 年齢 | 29歳(2025年12月現在) |
| 出身地 | アメリカ合衆国ニュージャージー州 |
| 出身大学 | ビラノバ大学 |
| ドラフト | 2018年2巡目33位(ダラス・マーベリックス) |
| 現所属 | ニューヨーク・ニックス |
| ポジション | ポイントガード |
| 背番号 | 11番 |
| ニックスキャプテン | 第36代(2024年8月就任) |
データソース: Wikipedia, Basketball-Reference.com
2024-25シーズン成績
| 項目 | 平均値 |
|---|---|
| 得点 | 29.1 |
| リバウンド | 3.2 |
| アシスト | 6.2 |
| フィールドゴール成功率 | 48.7% |
| 3ポイント成功率 | 38.0% |
| オールスター選出 | イースタン先発 |
データソース: NBA Rakuten, ESPN
シーズンハイライト:
- 2025年1月25日: NBAオールスターゲームのイースタン・カンファレンス先発に選出
- 2024年12月28日: ワシントン・ウィザーズ戦でシーズン最多55得点(後半42得点、延長含む)
- 4試合連続で30得点以上を記録(期間中FG成功率55.8%)
- 2024年8月: ニックス史上36代目キャプテンに就任
キャリアの進化
ビラノバ大学時代(2015-2018):
- NCAAチャンピオンシップ2回優勝(2016年、2018年)
- 2018年NCAA最優秀選手賞受賞
ダラス・マーベリックス時代(2018-2022):
- 控えポイントガードとして4年間プレー
- 2022年プレーオフで才能が開花
ニューヨーク・ニックス時代(2022年-現在):
- 2022年にフリーエージェントでニックスと4年1億500万ドルで契約
- 2023-24シーズン: 平均28.7得点でキャリアハイ、MVP投票4位、オールNBAセカンドチーム
- 2024年7月: チームを助けるため4年1億5650万ドルの契約を締結(本来は2025年オフに5年2億6900万ドル可能だったが大幅減額)
- 2024-25シーズン: NBAカップMVP受賞
JSPOアスレティックトレーナー視点での専門的分析:ブランソンの身体能力の真実
ここからは、アスレティックトレーナーとしての専門知識を活用し、ブランソン選手の身体能力について客観的なデータに基づいて詳しく分析していきます。
ジェイレン・ブランソンの基本フィジカルデータ
| 項目 | ブランソンの数値 | NBA平均(PG) | 評価 |
|---|---|---|---|
| 身長(シューズなし) | 185cm(6’1″) | 188cm(6’2″) | 平均以下 |
| 身長(シューズ着用) | 188cm(6’2.25″) | 190cm | 平均以下 |
| 体重 | 86kg(190lbs) | 86kg(190lbs) | 平均レベル |
| ウィングスパン | 193cm(6’4″) | 191cm(6’3″) | 平均以上 |
| 垂直跳び(最大) | 94cm(37.0インチ) | 90cm(35.5インチ) | 平均以上 |
| スタンディングリーチ | 244cm(8’0″) | – | – |
| デッドリフト | 約181kg(400lbs) | N/A | 体重比2.15倍 |
| ドラフトコンバイン体重 | 90kg(198.4lbs) | – | – |
データソース: 2018年NBAドラフトコンバイン公式測定値、RevUpSports.com, NBADraft.net
トップポイントガードとの身体能力比較
ブランソン選手の身体能力を理解するために、NBAのトップポイントガードと比較してみましょう。
| 選手名 | 身長 | 体重 | ウィングスパン | 垂直跳び | 身長に対するウィングスパン比 |
|---|---|---|---|---|---|
| ジェイレン・ブランソン | 6’1″ (185cm) | 190lbs (86kg) | 6’4″ (193cm) | 37.0″ (94cm) | +8cm |
| ステフィン・カリー | 6’2″ (188cm) | 185lbs (84kg) | 6’3.5″ (193cm) | 35.5″ (90cm) | +5cm |
| クリス・ポール | 6’1″ (185cm) | 175lbs (79kg) | 6’4.25″ (194cm) | 38.0″ (97cm) | +9cm |
| デイミアン・リラード | 6’2″ (188cm) | 195lbs (88kg) | 6’8″ (203cm) | 39.5″ (100cm) | +15cm |
| トレイ・ヤング | 6’1″ (185cm) | 180lbs (82kg) | 6’3.5″ (192cm) | N/A | +7cm |
| ジャ・モラント | 6’3″ (191cm) | 174lbs (79kg) | 6’7″ (201cm) | 44″ (112cm) | +10cm |
NBA平均ポイントガード: 身長6’2″ (188cm)、体重190lbs (86kg)、ウィングスパン約6’3″ (191cm)
この比較から、ブランソン選手の身体的特徴が見えてきます:
- 身長は平均以下: 185cmは、トップPGの中では小柄
- 体重は重め: 同身長のクリス・ポール(79kg)やトレイ・ヤング(82kg)と比較して、ブランソンは86kgと重い
- ウィングスパンは平均的: 193cmのウィングスパンは身長に対して+8cmで、リラード(+15cm)やモラント(+10cm)には劣るが、カリー(+5cm)よりは長い
- 垂直跳びは平均的: 94cmの垂直跳びは、リラード(100cm)やモラント(112cm)には劣るが、カリー(90cm)よりは高い
他のポイントガードとの身体的優位性:エビデンスに基づく分析
では、測定可能な身体能力がトップクラスではないブランソン選手が、なぜNBA最高レベルで活躍できるのでしょうか?ここからは、エビデンスに基づいて詳しく分析します。
優位性① 体重比2.15倍のデッドリフトによる圧倒的な下半身筋力
ブランソン選手の最大の身体的武器は、約181kg(400ポンド)のデッドリフトが可能な下半身の筋力です。
体重比での筋力評価:
- ブランソンの体重: 86kg
- デッドリフト重量: 181kg
- 体重比: 2.15倍
一般的なアスリートレベルとの比較:
| レベル | 体重比でのデッドリフト |
|---|---|
| 一般人(運動習慣なし) | 1.0-1.2倍 |
| 一般アスリート | 1.5-1.8倍 |
| ブランソン | 2.15倍 |
| エリートパワーリフター | 2.5-3.0倍以上 |
下半身筋力の重要性:
深い位置からの3ポイントシュート能力
ブランソンは、ディープスリー(3ポイントラインから1-2m離れた位置)からでも高確率でシュートを決めることができます。これは、下半身の筋力がボールに伝えられる力を最大化しているためです。
物理学的根拠:
- シュートの飛距離 = 初速度² × sin(2θ) / g
- 初速度を上げるには、下半身からの力の伝達が不可欠
- ブランソンの筋力は、少ないエネルギーで遠距離からのシュートを可能にする
コンタクトプレーへの耐性
NBA選手は平均98kg、体重差が10kg以上ある選手との接触も日常的です。ブランソンは86kgと軽量ですが、下半身の筋力が高いため、以下の能力を持っています:
- 体幹の安定性: 接触を受けても上半身がブレない
- 地面を踏む力: 接触時に地面を強く踏むことで、相手の力を受け流す
- バランスの維持: 筋力が高いほど、不安定な姿勢からでもバランスを保てる
バイオメカニクス的分析:
下半身筋力 → 股関節・膝・足首の安定性 → 体幹の安定性 → シュートフォームの一貫性
怪我予防
高い筋力は、関節への負担を軽減し、怪我のリスクを下げます。
運動生理学的メカニズム:
- 筋肉が関節を保護する「マッスルスリング効果」
- 着地時の衝撃吸収能力の向上
- 膝・足首への負担軽減
実際のデータ:
- 2024-25シーズン、ブランソンは17試合欠場していますが、これは計画的な休養も含まれており、重大な怪我はなし
- 2023-24シーズンは77試合に先発出場し、高い耐久性を証明
優位性② NBA史上最高レベルのバランス力とボディコントロール
専門家の評価:
CBS Sportsの分析記事「What makes Jalen Brunson so good?」では、ブランソン選手のバランス力について以下のように評価されています:
「ブランソンの最大の超能力(superpower)は、極限のバランス(extreme balance)かもしれない。彼は、空中にいる時でも、後ろ足でシュートを打つ時でも、すべてのショットでバランスを維持するボディコントロールを持っている」
バランス力の物理学的・生理学的メカニズム:
バランス力は、以下の要素の統合によって実現されます:
- 固有受容感覚(プロプリオセプション)
- 身体の位置・動き・力を感知する能力
- 足裏、足首、膝、股関節の受容器から脳への情報伝達速度が極めて速い
- 前庭系(平衡感覚)
- 内耳の前庭器官が身体の傾きを検知
- 姿勢制御のための反射的な筋肉調整
- 視覚系
- 周囲の環境とリムの位置を正確に把握
- 動きながらでも目標を追い続ける動体視力
- 下半身筋力による姿勢制御
- 181kgのデッドリフトが可能な筋力が、不安定な姿勢からでも体幹を安定させる
具体的なプレーでの発揮:
ケース① 接触を受けながらのフィニッシュ
ブランソンは、リムへのドライブ時に大きなディフェンダーから接触を受けても、以下のメカニズムでバランスを保ちます:
- 接触直前: 体幹を低く保ち、重心を下げる
- 接触瞬間: 下半身筋力で地面を強く踏み、反作用を得る
- 接触後: 上半身を安定させたまま、高度なレイアップパッケージでフィニッシュ
ケース② 空中でのボディコントロール
バスケットボールでは、ジャンプ後に身体の向きを変えたり、シュートの角度を調整する必要があります。
ブランソンは、空中でも以下の能力を発揮します:
- 体幹の回旋: 腹斜筋の強さで、空中で身体をひねる
- 腕の使い方: 長いウィングスパン(193cm)で、ディフェンダーの手を避ける
- シュートリリースの調整: ボールを放つタイミングと角度を微調整
他のPGとの比較:
| 選手名 | バランス力 | 評価根拠 |
|---|---|---|
| ブランソン | 極限レベル | CBS Sportsが「最大の超能力」と評価 |
| ステフィン・カリー | 非常に高い | 第一歩のクイックネスと組み合わせて発揮 |
| クリス・ポール | 高い | ミッドレンジでのバランスに優れる |
| カイリー・アービング | 極限レベル | 芸術的なフィニッシュで有名 |
データソース: CBS Sports, Posting and Toasting
優位性③ リムでの60%成功率を支える高度なレイアップパッケージ
驚異的なデータ:
「6フィート1インチ(185cm)のガードで、ダンクをほとんどしないブランソンが、リムでのショットの60%を成功させている」
データソース: CBS Sports
この成功率は、身長2m前後の選手が多いNBAにおいて、異常値と言えます。
高度なレイアップパッケージの構成要素:
多様なフィニッシュ技術
ブランソンは、状況に応じて以下のフィニッシュを使い分けます:
- レイアップ: 通常のアンダーハンド
- リバースレイアップ: リムの反対側から回り込む
- フローター: ディフェンダーの手が届かない高さでリリース
- 英国式レイアップ(Euro Step): 2ステップで相手を避ける
- スピンムーブ: 回転しながらディフェンダーを置き去りにする
強さと決断力
専門家の評価:
「ブランソンの強さ(strength)と決断力(decisiveness)が、リムでの効果的なフィニッシュを可能にしている」
バイオメカニクス的分析:
- 下半身筋力: ジャンプ後も体幹を安定させる
- 決断力: シュートを迷わずリリースすることで、ディフェンスの反応時間を奪う
- 身体接触への耐性: 接触を受けても、筋力でバランスを保つ
ボールプロテクション
ブランソンは、ドライブ時にボールを身体から離して保持し、ディフェンダーのスティールを防ぎます。
物理的メカニズム:
- ウィングスパン193cm → ボールを遠くに保持可能
- 下半身筋力 → 片手でボールを保持しながらバランス維持
優位性④ エリートフットワークと身体接触能力
専門家の評価:
NBAドラフト分析サイトでは、ブランソン選手について以下のように評価されています:
「エリートフットワークを持つが、エリート運動能力(athleticism)ではない」
「強くて筋肉質なポイントガードで、ペイント内に入り込むのを助けている」
データソース: NBADraft.net
フットワークの重要性:
フットワークとは、足の運び方・ステップの技術を指します。
バスケットボールでは、ジャンプ力やスピード以上に、フットワークが重要な場面が多くあります。
ブランソンのフットワークの特徴:
- ステップの多様性
- ジャブステップ: 片足を前に出して相手の反応を見る
- クロスオーバー: 左右にドリブルを切り返す
- ヘジテーションムーブ: 一瞬止まって相手のバランスを崩す
- 重心移動の巧みさ
- 低い姿勢を保ちながら、素早く方向転換
- 体重移動を使って、少ないエネルギーで加速
- 接触の開始(Initiating Contact)
- ディフェンダーに対して自ら接触を仕掛ける
- ファウルを引き出すか、相手のバランスを崩してスペースを作る
身体接触能力のバイオメカニクス:
ブランソンは、スピードとペースの変化で優位性を作り、接触を開始することでドライブします。
物理学的メカニズム:
- 質量(86kg) × 速度変化 = 運動量変化
- ブランソンが速度を変化させることで、ディフェンダーに大きな運動量変化を強いる
- ディフェンダーがバランスを崩した瞬間に、スペースが生まれる
筋力の貢献:
- 181kgのデッドリフトが可能な下半身筋力 → 接触時に相手を押し返す力
- 体重86kgの筋肉質な体 → 接触に耐える体幹の強さ
身体的ハンディキャップを超える理由:統合的分析
ブランソン選手が身長・ウィングスパン・垂直跳びで平均的ながら、NBA最高レベルで活躍できる理由をまとめます。
理由① 身体能力の「最適な組み合わせ」
ブランソンは、各身体能力を単独で見れば突出していませんが、「下半身筋力 × バランス力 × フットワーク × レイアップ技術」という掛け算で、他の選手を圧倒しています。
理由② 「強さ」を武器にしたプレースタイル
現代NBAは、スピードと3ポイントシュートが重視される傾向にありますが、ブランソンは「強さ」を武器にしています。
Posting and Toastingの記事より:
「ブランソンは現代NBAのモールド(型)を破っている。彼のプレースタイルは、身長・長さ・垂直性で差をつけられない中で、強さと俊敏性を武器に進化した」
理由③ 努力と規律
ブランソンは、大学時代から「ハッスルプレイヤー(hustle player)」を自称しており、努力を惜しまない姿勢で知られています。
ブランソン本人のコメント:
「私は自分自身をハッスルプレイヤーだと思っている」
データソース: CBS Sports
理由④ クラッチパフォーマンスでの強さ
ブランソンは、試合終盤の重要な場面(クラッチタイム)で特に高いパフォーマンスを発揮します。
心理学的・生理学的メカニズム:
- ストレス耐性: プレッシャーがかかる場面でも冷静な判断
- 身体的疲労への耐性: 高い筋力と持久力で、試合終盤でもパフォーマンス低下が少ない
- 経験: ビラノバ大学でのNCAAチャンピオンシップ優勝2回の経験が、大舞台での自信につながる
ニックスNBAカップ優勝の要因:ブランソンを支えたチーム力
ブランソン選手の素晴らしいパフォーマンスに加えて、チーム全体の貢献がニックスの優勝を支えました。
要因① OGアヌノビーの爆発
決勝戦で28得点・9リバウンドを記録したOGアヌノビーは、前半だけで20得点を挙げ、ニックスの流れを作りました。
アヌノビーの身体的優位性:
- 身長: 198cm
- ウィングスパン: 221cm(身長+23cm)
- 3ポイントシュート: 10本中5本成功(50%)
要因② ベンチの驚異的貢献
タイラー・コレック、ジョーダン・クラークソン、ミッチェル・ロビンソンらベンチメンバーが、第2・第3クォーターでチームを支えました。
データ:
- コレックとクラークソン: 合計29得点(うち後半24得点)
- ミッチェル・ロビンソン: 18分で15リバウンド(オフェンス10)
要因③ セカンドチャンス得点の支配
ニックスは23オフェンスリバウンドから32点のセカンドチャンス得点を獲得。
これは、スパーズのビクター・ウェンバンヤマ(221cm)を抑え込んだ証です。
要因④ 第4クォーターの圧倒的支配
第4クォーターで35-19というスコアは、ニックスの「勝負強さ」を示しています。
心理学的要因:
- ブランソンのリーダーシップ: キャプテンとしてチームを鼓舞
- 経験: 2023-24プレーオフでの経験が活きる
- 集中力: 重要な場面で集中力を維持
まとめ:小柄でも支配できる秘密
2025年12月17日、ジェイレン・ブランソン選手はNBAカップMVPを受賞し、ニックスに52年ぶりのチャンピオンシップトロフィーをもたらしました。
身体能力の真実:
- 身長185cmと小柄で、NBAポイントガード平均以下
- ウィングスパン193cm、垂直跳び94cmは平均的
- ダンクをほとんどしない
それでも支配できる理由:
- 体重比2.15倍のデッドリフト(181kg): 下半身の圧倒的な筋力
- NBA史上最高レベルのバランス力: 極限のボディコントロール
- リムでの60%成功率: 高度なレイアップパッケージ
- エリートフットワーク: 強さと俊敏性の融合
- クラッチパフォーマンス: 重要な場面での強さ
NBAカップ優勝の要因:
- ブランソンの圧倒的MVP級パフォーマンス(平均33.2得点、FG53.1%、3P46.2%)
- OGアヌノビーの爆発(決勝28得点)
- ベンチの驚異的貢献(コレック・クラークソン・ロビンソン)
- セカンドチャンス得点の支配(32点)
- 第4クォーターの圧倒的支配(35-19)
ブランソンの凄さ:
- 身体的ハンディキャップを努力と科学で超越
- 「強さ」を武器にした独自のプレースタイル
- 29歳でキャリアのピークを迎えつつある
- チームのために大幅減額してキャプテンに就任(1億ドル以上を譲歩)
ジェイレン・ブランソン選手の活躍は、身体能力だけがすべてではなく、筋力、バランス力、技術、努力、そしてチームへの献身がいかに重要かを教えてくれます。
185cmという小柄な体格ながら、NBA最高の舞台でMVPを獲得したブランソン。
彼のストーリーは、すべてのアスリート、すべての人に希望を与えてくれます。
今後も、ブランソン選手とニックスの挑戦から目が離せません。
次は、1973年以来となるNBAチャンピオンシップ優勝を目指して、さらなる高みへと挑戦し続けるでしょう。
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執筆者情報
エビナ(Ebiちゃん)
- 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
- 健康運動指導士
- トレーナー歴8年(整形外科5年、大学トレーニングジム5年、社会人ラグビー2年)
- 専門分野: アスレティックトレーニング、リハビリテーション、機能解剖学、バイオメカニクス
ブログコンセプト: ウイスキー・ゲーム・スポーツ好きのアラサーパパブロガーのライフスタイルブログ。スポーツ記事では専門知識を活かした科学的で深い分析を提供しています。家族(妻、長女5歳、長男4歳)と共に、人生を楽しみながら情報発信中。うぞ。
参考情報源
本記事は、以下の信頼性の高い情報源に基づいて執筆されています。
試合結果・統計データ:
選手情報・身体測定データ:
- Basketball-Reference.com
- RevUpSports.com – Physical Stats
- NBADraft.net
- Wikipedia – Jalen Brunson
- NBA Rakuten
プレースタイル分析:
- CBS Sports – What makes Jalen Brunson so good?
- Posting and Toasting – Breaking NBA Mold
- NBA.com – NBA Cup MVP
注意事項: この記事の分析は、執筆時点(2025年12月18日)での情報と専門知識に基づいています。選手の状態や成績は今後変化する可能性があります。







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