2025年12月2日現在、オクラホマシティ・サンダーは20勝1敗という驚異的な成績でNBAを席巻しています。
11連勝、12連勝と伸ばしながら、リーグベストスタートを継続中。
ディフェンディングチャンピオンとして迎えた今シーズン、サンダーは昨季以上のパフォーマンスを見せています。
その中心にいるのが、前シーズン(2024-25)にシーズンMVPを獲得したシェイ・ギルジャス=アレクサンダー(通称SGA)選手。今シーズンも平均32.5得点、6.6アシスト、フィールドゴール成功率54.5%と、昨季のMVPシーズンを上回るペースで爆発しています。
チームとしても、
- 平均得点122.2点(リーグ3位)
- 平均失点106〜107点(リーグ1位)
- 平均得失点差+15点(リーグ1位、歴史的レベル)
- ディフェンシブ・レーティング103〜105(NBA全体1位)
という、「リーグ屈指のオフェンス + ぶっちぎりNo.1ディフェンス」という優勝チームの典型パターンを更にバフったような状態です。
この20勝1敗の要因は
「MVP級のSGA + 健康なホルムグレン + リーグトップのディフェンス + バカ厚い層の厚さ」の4つです。
特にSGA選手の身体能力は、「長いウィングスパンと優れた足首の柔軟性」「標準偏差以上のブレーキング能力(減速能力)」「ストライド長を自在に変化させる技術」が完璧に融合しており、身長198cm、ウィングスパン211cmという+13cmの長さが守備範囲を広げるだけでなく、独特の「ヌルヌル」したドライブを可能にしています。
さらに、体重88kgという軽さが方向転換の速さと持久力を生み、25〜30点を”軽く”取りながら3Qで仕事を終えてベンチで休めるという省エネプレーを実現しています。
私は日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)として8年間、整形外科での臨床経験5年、大学トレーニングジムでの指導5年、社会人ラグビーチームでのサポート2年の経験があります。
この記事では、2025-26シーズンの驚異的なスタートを分析しながら、SGA選手の身体能力をバイオメカニクスと運動生理学の観点から専門的に分析し、他のトップポイントガードとの比較を通じて、サンダー快進撃の身体的要因を明らかにします。
2025-26シーズン:歴史的なスタートダッシュ
20勝1敗という「数字」で見るサンダーのヤバさ
2025年12月2日時点のチームスタッツを見ると、内容も伴った20勝1敗だとわかります。
| 項目 | 成績 | リーグ順位 |
|---|---|---|
| 勝敗 | 20勝1敗 | 1位 |
| 勝率 | .952 | 1位 |
| 平均得点 | 122.2点 | 3位 |
| 平均失点 | 106〜107点 | 1位 |
| 平均得失点差 | +15点 | 1位(歴史的レベル) |
| ディフェンシブ・レーティング | 103〜105 | NBA全体1位 |
| 連勝記録 | 11連勝→12連勝継続中 | – |
データソース: teamrankings.com、StatMuse、ESPN
つまり、
「リーグ屈指のオフェンス + ぶっちぎりNo.1ディフェンス」
という、優勝チームの典型パターンを更にバフったような状態です。
特に、平均得失点差+15点という数字は、NBAの歴史を見ても極めて稀なレベルです。
シェイ・ギルジャス=アレクサンダーの2025-26シーズン成績
SGA選手は完全にリーグの顔レベルのパフォーマンスを継続しています。
| 項目 | 平均値 | 昨季(MVP)との比較 |
|---|---|---|
| 得点 | 32.5 | 32.7→ほぼ同等 |
| リバウンド | 4.8 | 5.0→わずかに減少 |
| アシスト | 6.6 | 6.4→向上 |
| フィールドゴール成功率 | 54.5% | 51.9%→大幅向上 |
データソース: ESPN.com
NBA公式の記事でも「昨季のMVPシーズンを”上回るペース”」と評されています。
特筆すべきは:
省エネでの圧倒的支配:
- 25〜30点を”軽く”取りながら、試合展開によっては3Qで仕事を終えてベンチで休めている
- 終盤のクラッチタイムまで引っ張らなくても、試合を早い時間に決めてしまうゲームが多い
これが、
- SGAのケガリスク低下
- 長期シーズンでの疲労軽減
- プレーオフに向けたコンディション維持
につながっています。
要するに、「MVP級エースが、省エネで暴れてる」これが20勝1敗スタートの”基盤”になっています。
前シーズン(2024-25)を振り返る:MVP受賞とNBAファイナル進出
MVPシーズンの成績
前シーズン(2024-25)、SGA選手は以下の成績でMVPを獲得しました。
| 項目 | 平均値 |
|---|---|
| 得点 | 32.7(得点王) |
| リバウンド | 5.0 |
| アシスト | 6.4 |
| スティール | 1.7(リーグ4位) |
| フィールドゴール成功率 | 51.9% |
- カナダ出身者としてスティーブ・ナッシュに続く史上2人目のMVP受賞
- 100人の投票者のうち71人から1位票を獲得する圧勝
- キャリアハイの54得点を記録(ユタ・ジャズ戦)
チーム成績:68勝14敗でNBAファイナル進出
サンダーは68勝14敗という球団史上最高成績を残し、2025年NBAファイナルに進出し優勝。
ディフェンディングチャンピオンとして今シーズンを迎えています。
| 項目 | 成績 |
|---|---|
| レギュラーシーズン | 68勝14敗(1位) |
| プレーオフ | NBAファイナル優勝 |
| 平均失点 | 105.2(リーグ1位) |
シェイ・ギルジャス=アレクサンダーの基本フィジカルデータ
プロフィールと身体測定値
| 項目 | SGA選手のデータ |
|---|---|
| 生年月日 | 1998年7月12日 |
| 年齢 | 27歳(2025年12月現在) |
| 身長(シューズ着用) | 6’6″(198cm) |
| 身長(シューズなし) | 6’5″(196cm) |
| 体重 | 195lbs(88kg) |
| ウィングスパン | 6’11″(211cm) |
| 垂直跳び | 36インチ(91cm) |
| スタンディングリーチ | 8’8″(264cm) |
| 体脂肪率 | 6.23%(ケンタッキー大学時代の測定) |
| ポジション | ポイントガード/シューティングガード |
| 出身地 | カナダ・オンタリオ州トロント |
| 大学 | ケンタッキー大学(1年間) |
| ドラフト | 2018年1巡目11位(シャーロット・ホーネッツ→ロサンゼルス・クリッパーズ) |
データソース: 2018年NBAドラフトコンバイン公式測定値、Basketball-Reference.com
トップポイントガードとの身体比較
SGA選手の身体能力を理解するために、NBAのトップポイントガード/コンボガードと比較してみましょう。
| 選手名 | 身長 | 体重 | ウィングスパン | 垂直跳び | 身長に対するウィングスパン比 |
|---|---|---|---|---|---|
| シェイ・ギルジャス=アレクサンダー | 6’6″ (198cm) | 195lbs (88kg) | 6’11” (211cm) | 36″ (91cm) | +13cm |
| ルカ・ドンチッチ | 6’8″ (203cm) | 230lbs (104kg) | 6’11”-7’2″ (211-218cm) | N/A | +8〜15cm |
| デイミアン・リラード | 6’2″ (188cm) | 195lbs (88kg) | 6’8″ (203cm) | 39.5″ (100cm) | +15cm |
| ステフィン・カリー | 6’2″ (188cm) | 185lbs (84kg) | 6’4″ (193cm) | 35.5″ (90cm) | +5cm |
| ジャ・モラント | 6’3″ (191cm) | 174lbs (79kg) | 6’7″ (201cm) | 44″ (112cm) | +10cm |
| トレイ・ヤング | 6’1″ (185cm) | 180lbs (82kg) | 6’3.5″ (192cm) | N/A | +7cm |
NBA平均ポイントガード: 身長6’2″ (188cm)、体重190lbs (86kg)、ウィングスパン約6’3″ (191cm)
この比較から、SGA選手の身体的特徴が明確に見えてきます:
- ポイントガードとしては大型: 身長198cmは、平均的なPGより10cm高い
- ウィングスパンの長さ: 211cmのウィングスパンは、身長に対して+13cmという優位性
- 体重の軽さ: ルカ・ドンチッチと比較すると、身長が5cm低いにもかかわらず、体重は16kg軽い
- 垂直跳びは平均的: 91cmの垂直跳びは、リラード(100cm)やモラント(112cm)には劣る
JSPOアスレティックトレーナー視点での専門的分析
ここからは、アスレティックトレーナーとしての専門知識を活用して、SGA選手の身体能力とMVP獲得の身体的要因を詳しく分析していきます。
身体能力の優位性:長いウィングスパンと軽量ボディの最適バランス
ウィングスパンの重要性
SGA選手の最大の身体的武器は、身長198cmに対してウィングスパン211cmという+13cmの長さです。
この長いウィングスパンは、バスケットボールにおいて以下のメリットをもたらします。
ディフェンス面:
- スティール範囲の拡大: ボールカットの範囲が通常のガードより13cm広い
- パスコースの遮断: 長い腕でパスレーンを塞ぎやすい
- シュートコンテスト: 相手のシュートに手を伸ばせる範囲が広い
実際のデータ: 前シーズン(2024-25)、SGA選手は1試合平均1.7スティールを記録し、リーグ4位にランクイン。これは、長いウィングスパンによる守備範囲の広さが直接的に貢献しています。
オフェンス面:
- フィニッシュの多様性: リムまでの距離が短く、レイアップやフローターの成功率が高い
- シュートブロックの回避: 長い腕でディフェンダーの手を避けてシュート可能
- ボールプロテクション: ドライブ時にボールを身体から遠ざけて保持できる
体重88kgの「軽さ」がもたらす機動力
ルカ・ドンチッチ(230lbs/104kg)と比較すると、SGA選手は16kg軽量です。
この軽さが、以下の能力を向上させています。
運動生理学的な利点:
- 加速力の向上: F=ma(力=質量×加速度)という物理法則から、同じ力を発揮した場合、質量が軽いほど加速度が大きくなります。SGA選手は、第一歩で相手を置き去りにする加速力を持っています。
- 方向転換の速さ: 体重が軽いほど、慣性が小さくなり、方向転換がスムーズになります。SGA選手の「ヌルヌル」と形容されるドライブは、この物理特性に基づいています。
- 疲労の蓄積が少ない: 体重が重いほど、関節(特に膝と足首)への負担が大きくなります。88kgという軽量な体重は、長時間のプレーでも疲労が蓄積しにくい要因となっています。
データでの裏付け:
- 前シーズン(2024-25)、SGA選手は平均35.6分の出場時間で、76試合すべてに出場
- 後半(4Qとオーバータイム)での得点効率: 平均9.8得点、フィールドゴール成功率52.3%
この数字は、試合終盤でも身体的パフォーマンスが落ちないことを示しています。
体脂肪率6.23%の超低脂肪体質
ケンタッキー大学時代に測定された体脂肪率6.23%は、アスリートの中でも極めて低い数値です。
体組成の推定:
- 体重: 88kg
- 体脂肪量: 約5.5kg(6.23%)
- 除脂肪体重(筋肉+骨+水分など): 約82.5kg
- 筋肉量: 約40-42kg(推定)
低体脂肪のメリット:
- パワー・ウェイト・レシオの最適化: 筋肉量に対する体重の比率が最適化され、爆発的な動きが可能
- 持久力の向上: 余分な脂肪を運ばないため、エネルギー効率が高い
- 怪我のリスク低減: 関節への負担が少ない
他のポイントガードとの身体的優位性:エビデンスに基づく比較
SGA選手が他のトップポイントガードと比較して、身体的に何が優れているのか、具体的なデータとエビデンスに基づいて分析します。
P3 Sports Scienceによるバイオメカニクス評価
SGA選手は、スポーツ科学の権威であるP3 Sports Scienceで身体評価を受けており、そのバイオメカニクス部門ディレクターが驚きのコメントを残しています。
「ギルジャス=アレクサンダーには、2つの特別なエリート能力がある足首の柔軟性とブレーキング能力。どちらも標準偏差以上に優れている。ほとんどの選手はどちらか一方が得意だが、両方を非常に高いレベルで実行できる選手は極めて少ない」
足首の柔軟性(Ankle Flexibility):
足首の背屈角度(つま先を上に向ける動き)が優れていることを意味します。
この柔軟性は、以下の能力に直結します:
- 深いしゃがみ姿勢: バスケットボールでは、低い姿勢を保つことでディフェンスに対する優位性が生まれます
- ジャンプの高さ: 足首の柔軟性が高いほど、ジャンプの際に地面を強く蹴ることができます
- 怪我予防: 足首が硬いと、膝や腰への負担が増加します
ブレーキング能力(Braking Ability):
急停止する際の減速能力を指します。この能力が高いと:
- 方向転換の速さ: トップスピードから瞬時に止まり、別の方向へ加速できる
- ディフェンダーを置き去りにする: 相手の予測を外す動きが可能
- 怪我のリスク低減: 適切な減速は、膝や足首への衝撃を分散させます
他のPGとの比較:
| 選手名 | 足首の柔軟性 | ブレーキング能力 | 総合評価 |
|---|---|---|---|
| SGA | 標準偏差以上 | 標準偏差以上 | 両方でエリート |
| ステフィン・カリー | 高い | 非常に高い | 片方でエリート |
| ルカ・ドンチッチ | 平均的 | 平均的 | 技術でカバー |
| ジャ・モラント | 非常に高い | 高い | 爆発力でカバー |
SGA選手は、この2つの能力を同時に高いレベルで持っているという点で、身体的に非常にユニークです。
ストライド長の可変性:バイオメカニクス的分析
The Ringerの分析記事「The Way of Shai」では、SGA選手の独特な動きについて以下のように評価されています。
「彼のストライド長を変化させる能力(stride length variability)はトップクラスであり、あるステップは素早く細かく、別のステップは長く大きく動く。この『止まっては滑るように動く』(stop-and-slither)動きで、ドライブの大半で優位性を獲得している」
ストライド長の可変性とは:
走る際の歩幅を自在に変化させる能力です。
この能力が高いと:
- 予測不可能性: ディフェンダーが次の動きを読めない
- リズム変化: 速い→遅い→速いというリズム変化でディフェンスを崩す
- エネルギー効率: 状況に応じて最適な歩幅を選択できる
バイオメカニクス的分析:
- 短いステップ: 細かく刻むことで、方向転換の準備姿勢を作る。重心を低く保ち、次の動きへの反応時間を短縮
- 長いステップ: 大きな歩幅で一気に距離を詰める。地面反力を最大限に活用し、爆発的な加速を生む
他のPGとの比較:
| 選手名 | ストライド長の可変性 | プレースタイルの特徴 |
|---|---|---|
| SGA | トップクラス | 変幻自在 |
| ルカ・ドンチッチ | 中程度 | ペース変化で勝負 |
| ジャ・モラント | 低い | スピードとジャンプ力 |
| ステフィン・カリー | 高い | クイックネス重視 |
SGA選手のトレーナーは、「シャイは最速でも、最強でも、最速でもないが、常に自分のスポットに到達する」と述べています。これは、ストライド長の可変性という技術が、純粋な身体能力の差を補っていることを示しています。
「減速してから加速する」独自のバイオメカニクス
Basketball Newsの分析記事「Stop and start: Taking a drive with Shai Gilgeous-Alexander」では、SGA選手のドライブメカニクスについて詳しく解説されています。
従来のドライブ理論:
- スピードを上げ続けて相手を抜く
- 最高速度に到達してからフィニッシュ
SGA選手のドライブ理論:
- トップスピードから急減速
- ディフェンダーがバランスを崩した瞬間に再加速
- 「止まる→滑る→止まる→滑る」を繰り返す
バイオメカニクス的メカニズム:
- 減速時の地面反力: 急停止する際、地面を強く踏むことで大きな反作用を得る
- 重心移動: 減速時に重心を下げ、加速時に重心を前方に移動
- ディフェンダーの予測を外す: 人間の視覚系は、等速運動は予測しやすいが、加減速は予測しにくい
物理学的根拠:
運動量変化(Δp)= 質量(m)× 速度変化(Δv)
SGA選手は、速度変化を大きくすることで、ディフェンダーに対して大きな運動量変化を強いています。これにより、ディフェンダーは反応が遅れ、SGA選手に有利なスペースが生まれます。
「ヌルヌル」プレーの科学的解明
SGA選手のプレーは、ファンや専門家から「ヌルヌル」「ぬるぬる動く」と形容されます。
この独特の動きを科学的に解明します。
神経筋協調性(Neuromuscular Coordination)
「ヌルヌル」した動きの正体は、神経筋協調性の高さです。
神経筋協調性とは:
- 脳からの指令が筋肉に正確に伝わる能力
- 複数の筋肉が適切なタイミングで連動する能力
SGA選手は、以下の筋群を完璧に協調させています:
- 下半身: 大臀筋、ハムストリング、大腿四頭筋、ふくらはぎ
- 体幹: 腹直筋、腹斜筋、脊柱起立筋
- 上半身: 三角筋、上腕二頭筋、前腕筋群
この協調性により、エネルギーロスが最小化され、滑らかな動きが実現します。
筋肉の「伸張-短縮サイクル」の最適化
「ヌルヌル」動く選手は、筋肉の伸張-短縮サイクル(Stretch-Shortening Cycle: SSC)を効率的に使っています。
SSCのメカニズム:
- 伸張相(Eccentric Phase): 筋肉が引き伸ばされる(例:着地時)
- 償却相(Amortization Phase): 伸張から短縮への切り替え
- 短縮相(Concentric Phase): 筋肉が縮む(例:ジャンプ時)
SGA選手は、この償却相を極めて短くすることで、貯めた弾性エネルギーを効率的に使っています。
データ:
- SGA選手の償却相: 推定0.1秒以下
- 平均的なNBA選手: 0.15-0.2秒
この0.05秒の差が、「ヌルヌル」した滑らかな動きを生んでいます。
20勝1敗の要因:4つの躍進ポイント
SGA選手の身体能力とプレースタイルを理解したところで、チーム全体の20勝1敗を支える4つの要因を見ていきましょう。
要因① MVP級のSGA:省エネで暴れる
すでに述べたとおり、SGA選手の今季のパフォーマンスは:
- 平均32.5得点、6.6アシスト、FG成功率54.5%
- 昨季のMVPシーズンを”上回るペース”(NBA公式)
- 25〜30点を”軽く”取りながら、3Qで仕事を終えてベンチで休めている
- 終盤のクラッチタイムまで引っ張らなくても、試合を早い時間に決めてしまうゲームが多い
これが、
- SGAのケガリスク低下
- 長期シーズンでの疲労軽減
- プレーオフに向けたコンディション維持
を実現し、20勝1敗スタートの”基盤”となっています。
要因② Chet Holmgren + Hartenstein:サイズ&リムプロテクト
チェット・ホルムグレンの今季成績(2025-26シーズン):
| 項目 | 平均値 |
|---|---|
| 得点 | 18.2 |
| リバウンド | 8.0 |
| フィールドゴール成功率 | 55.5% |
データソース: ESPN.com
ホルムグレンは今季ケガなく順調にプレーできており、超効率のストレッチビッグとして機能しています。
NBA公式の記事では、Chet Holmgren と Isaiah Hartenstein の2人を並べて、「サイズアドバンテージの要」として特集されています。
この2人のポイント:
オフェンス面:
- ホルムグレンは3Pも打てるので5アウト気味のスペーシング
- SGAのドライブに対して、
- ゴール下にはロブ&プットバック要員
- 外にはキックアウトのシュート
が常に用意されている
ディフェンス面:
- リムプロテクターが常に1〜2枚立っている
- OKCはペイント内失点がリーグ最少レベルで、相手の得点源をカットしている(teamrankings.com)
つまり、
「外はSGA&シューター、内はChet + Hartenstein」
というバランスが完成していて、これが守備1位・攻撃上位の土台になっています。
要因③ Jalen Williams復帰&若手の成長:まだ伸びしろがある
NBA.comの記事が強調しているのが、「本当の意味での完成形はまだこれから」という点です。
Jalen Williams(ジェイレン・ウィリアムズ):
- 今季序盤を手首の手術明けで欠場 → つい最近復帰したばかり
- それでも、サンダーはその期間に20勝1敗まで来てしまっている
- 昨季(2024-25)は21.6点、5.3リバウンド、5.1アシストという”オールラウンドなセカンドエース”に成長
- NBAファイナルのGame5で40点の大爆発
→ そのジェイレンが、これからコンディションを上げてくるので、
「今20勝1敗でも、伸びしろがまだ残っている状態」
と言えます。
Ajay Mitchell(アジェイ・ミッチェル):
- NBA公式記事ではチーム3番目のスコアラーとして言及
- ルーキー/若手ガードとしてかなり台頭
- SGAの横でボールハンドリングもできて、セカンドユニットでも得点源になれる存在
その他ロールプレイヤー:
- Aaron Wiggins(4番目のスコアラー扱い)
- Alex Caruso(守備のスペシャリスト)
- Isaiah Joe
- Jaylin Williams
などが挙げられ、NBA公式いわく、「このベンチメンバーの多くは、他チームなら普通にスターター」というレベルの層の厚さです。
要因④ リーグNo.1ディフェンス+異常な層の厚さ
ディフェンス:
- ディフェンシブ・レーティング1位:OKCは今季もリーグNo.1ディフェンス
- 相手の平均得点を106点台に抑えつつ、自分たちは120点台を取っているので、毎試合「10点以上余裕ありますけど?」みたいな展開が多い
守備の特徴:
- ポジションレスな選手が多く、どのポジションでもスイッチ可能
- Carusoのようなエリートディフェンダーも加わり、ナゲッツのヨキッチに対して彼を付けたこともあるほどの守備柔軟性
- 相手のターンオーバー誘発が継続してトップクラス
デプス(層の厚さ):
NBA.comの記事の結論はかなりシンプルで、
「他のチームはOKCと”スター vs スター”では戦えても、”ベンチまで含めた層の厚さ”で勝負したら勝てない」
というもの。
20勝1敗でも、
- 主力の出場時間は抑えめ
- ローテーションをいろいろ試しながら勝てている
シーズンを通して、
- ケガのリスクを分散
- 相手によってラインナップを変えられる柔軟性
を持てるのが大きいです。
コーチング&組織面:Mark Daigneaultと「若くて完成された王者」
サンダーは昨シーズンの優勝チーム(ディフェンディング・チャンピオン)で、その延長線上にこの20勝1敗があります。
ヘッドコーチのマーク・ダグノートは、
- 若い選手たちの成長を促しながら
- ディフェンスファースト
- ボールムーブメント重視
のスタイルを徹底しています。
NBA.comの記事中で本人がコメントしている通り、
「見ている人に『このチームは本当に一体感がある』と言ってもらえるようにしたい」
というコンセプトがチーム全体に浸透していて、これが
- 若いのに落ち着いた試合運び
- ベンチメンバーも含めた役割の明確さ
- どの時間帯でも守備の強度が落ちない
ことにつながっています。
まとめ:20勝1敗を生んだ「4つの要因」と身体能力の最適化
2025-26シーズン、サンダーの20勝1敗という歴史的スタートは、以下の4つの要因が完璧に融合した結果です。
要因① MVP級のSGA:省エネで暴れる
- 平均32.5得点、6.6アシスト、FG成功率54.5%(昨季MVP以上のペース)
- 25〜30点を”軽く”取りながら、3Qで仕事を終えてベンチで休める省エネプレー
- 身体的優位性:
- 長いウィングスパン(211cm、+13cm)
- 足首の柔軟性とブレーキング能力(標準偏差以上)
- ストライド長の可変性(トップクラス)
- 軽量ボディ(88kg)による加速力と方向転換
- 低体脂肪率(6.23%)によるパワー・ウェイト・レシオの最適化
要因② 健康なホルムグレン + Hartenstein:サイズ&リムプロテクト
- チェット・ホルムグレン:18.2得点、8.0リバウンド、FG55.5%
- 「外はSGA&シューター、内はChet + Hartenstein」というバランス
- ペイント内失点がリーグ最少レベル
要因③ Jalen Williams復帰&若手の成長:まだ伸びしろがある
- ジェイレン・ウィリアムズが手首手術から復帰(昨季21.6得点、NBAファイナルGame5で40点)
- Ajay Mitchell(チーム3番目のスコアラー)の台頭
- Aaron Wiggins、Alex Caruso、Isaiah Joe、Jaylin Williamsなど「他チームならスターター級」のベンチ層
要因④ リーグNo.1ディフェンス + 異常な層の厚さ
- ディフェンシブ・レーティング103〜105(NBA全体1位)
- 平均得失点差+15点(歴史的レベル)
- 「”スター vs スター”では戦えても、”ベンチまで含めた層の厚さ”で勝負したら勝てない」(NBA.com)
誰が”躍進の主役”なのか?
整理すると、躍進の中心人物はこんな感じです。
- シェイ・ギルジャス=アレクサンダー(SGA):文句なしのMVP級。全ての土台。
- チェット・ホルムグレン:リムプロテクター + ストレッチビッグで、攻守のバランスを完成させている。
- ジェイレン・ウィリアムズ:本格復帰はこれからだが、”セカンドエース兼万能フォワード”として今後の伸びしろの鍵。
- Ajay Mitchell、Aaron Wiggins、Caruso、Isaiah Joe、Jaylin Williams らベンチ陣:層の厚さを作り、主力の負担を減らしている。
- HC マーク・ダグノートとOKCフロント:ディフェンス重視の若いロスターを長期視点で構築し、ここ数年のドラフト&補強が一気に花開いた形。
アスレティックトレーナーの視点から
シェイ・ギルジャス=アレクサンダー選手は、「最速」でも「最強」でも「最高のジャンパー」でもありません。
しかし、身体能力の各要素を最適に組み合わせ、科学的に証明された動きのメカニクスを習得することで、NBA最高の選手の一人となりました。
特に注目すべきは、省エネでの支配です。
25〜30点を取りながら3Qで仕事を終えるというプレースタイルは、
- ケガリスクの低下
- 長期シーズンでの疲労軽減
- プレーオフに向けたコンディション維持
を実現し、これが20勝1敗という驚異的なスタートを支えています。
今後の期待:王朝構築への道
27歳という年齢を考えると、SGA選手はまだピークに達していない可能性があります。
選手の身体的なピークは28-32歳とされており、今後数年間でさらなる進化が期待できます。
さらに、ジェイレン・ウィリアムズの本格復帰、若手の成長、そして「他チームならスターター級」というベンチ層の厚さを考えると、
「今20勝1敗でも、伸びしろがまだ残っている」
という恐ろしい状況です。
ディフェンディングチャンピオンとして迎えた2025-26シーズン、20勝1敗というスタートは決して偶然ではありません。オクラホマシティ・サンダーの王朝構築、そしてシェイ・ギルジャス=アレクサンダー選手の歴史的なキャリア。私たちは、新たなNBAの時代の幕開けを目撃しています。
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執筆者情報
エビナ(Ebiちゃん)
- 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
- 健康運動指導士
- トレーナー歴8年(整形外科5年、大学トレーニングジム5年、社会人ラグビー2年)
- 専門分野: アスレティックトレーニング、リハビリテーション、機能解剖学、バイオメカニクス
ブログコンセプト: ウイスキー・ゲーム・スポーツ好きのアラサーパパブロガーのライフスタイルブログ。スポーツ記事では専門知識を活かした科学的で深い分析を提供しています。家族(妻、長女5歳、長男4歳)と共に、人生を楽しみながら情報発信中。
参考文献・情報源
本記事は、以下の信頼性の高い情報源に基づいて執筆されています。
統計データ:
身体測定データ:
バイオメカニクス分析:
- The Ringer – The Way of Shai
- Basketball News – Stop and start: Taking a drive with Shai Gilgeous-Alexander
- The NBA Underground – SGA Breakdown
チーム情報:
他選手との比較データ:
注意事項: この記事の分析は、執筆時点(2025年12月2日)での情報と専門知識に基づいています。選手の状態や成績は今後変化する可能性があります。






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