驚異の天才ボクサー堤麗斗とは
日本ボクシング界に新たな旋風を巻き起こしている堤麗斗(つつみ れいと)選手。
22歳の若さでアマチュア9冠という驚異的な実績を誇り、2025年5月2日、米国ニューヨークのタイムズスクエアでプロデビューという異例の華々しいスタートを切る注目のボクサーだ。千葉県出身のサウスポー選手で、兄はすでにプロで活躍中のWBA世界スーパーフェザー級4位の堤駿斗選手という実力派ボクシングファミリーの一員でもある。
堤麗斗選手の特異な点は、デビュー前からその才能と潜在能力が国内外から高く評価されていることだ。
史上3人目となるA級ライセンスでのプロ転向を果たし、世界中のボクシング関係者から熱い視線を集めている。日本のみならず、世界レベルでも突出した逸材と評される堤選手の経歴と実力、そして注目度の高さを詳しく見ていこう。
堤麗斗選手 プロフィール
- 生年月日:2002年8月26日(22歳)
- 出身地:千葉県千葉市
- 身長:165cm
- 階級:スーパーフェザー級(デビュー時)
- 構え:サウスポー
- 所属:志成ボクシングジム
- アマチュア戦績:59勝2敗
- アマチュアタイトル:9冠
- プロデビュー:2025年5月2日(ニューヨーク・タイムズスクエア)
ニューヨーク・タイムズスクエアでの異例のデビュー戦
堤麗斗選手のプロデビュー戦は、2025年5月2日(日本時間3日)、ニューヨークのタイムズスクエアで行われる。
これは日本人ボクサーとして異例中の異例のデビュー舞台だ。特に注目すべきは、このデビュー戦がただの小さな前座試合ではなく、世界的なビッグイベント「FATAL FURY: City of the Wolves」の主要カードとして組まれていることだ。
対戦相手はレベール・ウィッティントン(米国・戦績1勝1KO2敗1分け)でスーパーフェザー級6回戦として組まれている。
このイベントには元WBCライト級暫定王者のライアン・ガルシア、世界2階級制覇王者のデビン・ヘイニーなど
世界的スターが集結し、WBO世界スーパーライト級王座統一戦も行われる超ビッグマッチの一環として
堤選手のデビュー戦が実施される。
このような世界的ビッグイベントの唯一の前座試合として抜擢されたことは、堤選手への期待の大きさを物語っている。同イベントはメキシコの祝日「シンコ・デ・マヨ」ウィークの開幕戦として位置づけられているビッグイベントで、その2日後には井上尚弥選手もラスベガスのT-モバイルアリーナで防衛戦を行うなど、日本ボクシング界にとって注目の期間となる。
堤麗斗の圧倒的なアマチュア戦績
堤麗斗選手がここまで注目される理由の一つは、その圧倒的なアマチュア実績にある。
驚異の通算59勝2敗という勝率を誇り、アマチュア時代に獲得したタイトルは実に9つにのぼる。
主な獲得タイトル
- U-15全国大会で4年連続優勝(小学5年生から中学2年生まで)
- 2017年 ASBCアジアジュニア選手権 – 優勝(金メダル)
- 2019年 ASBCアジアユース選手権 – 優勝(金メダル)
- 高校1年時のインターハイ・国体・全国高校選抜 – 全優勝
- 高校2年時のインターハイ・国体 – 連覇(高校5冠達成)
- 2021年 世界ユース選手権(ポーランド・キェルツェ) – ライト級優勝(金メダル)
- 2023年 全日本大学選手権 – 優勝
特に注目すべきは高校時代の活躍で、1〜2年時に全国大会で5つの冠を獲得。本来であれば高校3年時に「パーフェクト・レコード」(高校3年間の全国大会全制覇)に挑んでいたが、コロナ禍の影響ですべての大会が中止となり、結果的に高校5冠で終わることとなった。
また2021年には世界ユース選手権でライト級優勝を果たし、世界レベルでの実力を証明。この活躍が認められ、2025年3月には史上3人目となるA級ライセンスでのプロテスト合格という特別な扱いを受けることになる。
異例の背景:リング誌アンバサダー契約とサウジからのラブコール
堤麗斗選手のプロデビューをさらに特別なものにしているのが、
米国の老舗ボクシング専門誌『ザ・リング』とのブランドアンバサダー契約だ。
「ザ・リング」は「バイブル・オブ・ボクシング」とも呼ばれる米国で最も権威のあるボクシング専門誌で、堤選手はデビュー前にも関わらず同誌と契約を交わすという前代未聞の扱いを受けている。同誌は堤選手を「日本が誇る逸材」と評し、世界的に見ても突出した才能の持ち主だと紹介している。
さらに驚くべきは、プロ転向を発表した翌日の2025年3月19日にサウジアラビア政府直轄プロジェクト「リヤド・シーズン」を主催する総合娯楽庁のトゥルキ・アラルシク長官が自身のSNSに日本語で以下のようなメッセージを投稿したことだ:
「堤麗斗さん…私はこのボクサーの才能と技術が好きです。彼にはぜひ私や私のチームに連絡してもらい、今後の計画について話し合いたいと思っています」
これは世界的プロモーターからデビュー前の選手への公開ラブコールという極めて異例の事態である。
サウジアラビアは近年、井上尚弥選手との推定総額30億円の複数年スポンサー契約を結ぶなど、ボクシング界への積極的な投資を行っており、堤選手もその投資対象として大きな期待が寄せられていることが窺える。
その後トゥルキ・アラルシク長官は、堤選手がザ・リング誌とアンバサダー契約を結んだことを受けて「彼が世界チャンピオンとなり、日本とアジアの誇りとなるその日まで、常に彼を支え続けることを約束します」と再度日本語で投稿するなど、異例の熱いバックアップを表明している。
堤麗斗選手の強さと戦闘スタイル
堤麗斗選手の身長は165cmと小柄ながら、その戦闘スタイルは極めて洗練されており特にディフェンス面での評価が高い。「被弾しないボクシング」を得意とし、じっくり相手を見極めてから攻める巧みな試合運びが特徴だ。
堤選手はサウスポー(左構え)のスタイルを持ち、兄の堤駿斗選手がオーソドックス(右構え)であるのと対照的だ。
技術面では「ジャブでリズムを作る」作戦を基本としながらも、パワーでじわじわと押していく堅実なボクシングスタイルを展開する。
高校ボクシング部の監督は、兄と弟の比較において「高校2年の時を比べるとスピード、コンビネーションは兄のほうが上だけど、ディフェンスは堤麗斗選手が上回っている」と評価しており、両者の違いを端的に示している。
堤選手自身、ボクシングの魅力について「相手との駆け引きが一番面白い。先にミスしたほうが負ける」と語っており、戦術面での高い意識を垣間見ることができる。また「相手の動きを読んで先の動きが見える」と発言するなど、若干16歳の時点で既に高度な読みの能力を持っていたことがわかる。
一流選手としての素質と潜在能力を兼ね備えた堤選手は、プロデビュー前から既に「高校ボクシング界の枠にとどまらない逸材」と評されるほどの実力の持ち主であり、今後のプロのリングでどのような進化を見せるのか大いに期待される選手である。
兄・堤駿斗との関係と兄弟での世界制覇への展望
堤麗斗選手について語る上で避けて通れないのが、3歳年上の兄・堤駿斗選手の存在だ。
兄の駿斗選手はアマチュア13冠、現在WBA世界スーパーフェザー級4位にランクされる実力者で、既にプロで目覚ましい活躍を見せている。
堤兄弟は日本史上初の「兄弟での世界ユース選手権金メダリスト」を達成しており、兄弟揃って規格外の才能を持つことがわかる。麗斗選手がボクシングを始めたきっかけも「兄の駿斗に憧れて」であり、小学5年生からボクシングの道を歩み始めた。
麗斗選手は「兄貴が獲れなかったタイトルを獲りたい」と語るなど、兄を超える意欲も見せつつ、兄弟で世界の頂点を目指す展望を持っている。駿斗選手と麗斗選手が共に世界王者となれば、亀田三兄弟(興毅・大毅・和毅)や井上兄弟(尚弥・拓真)に続く兄弟世界チャンピオンとなる。日本ボクシング界ではすでに兄弟で世界王者になった例はあるが、堤兄弟が実現させれば、その強さと才能で新たな歴史の1ページを刻むことになるだろう。
現在、兄の駿斗選手がスーパーフェザー級で世界戦線にいることもあり、麗斗選手は当初フェザー級でプロデビューする意向を示していたが、デビュー戦は契約体重の関係でスーパーフェザー級(58.9kg以下)で行われる予定となっている。
将来的には適正階級を見極めながら、兄弟での世界制覇を視野に入れた活動が期待される。
今後のキャリア展望と世界への挑戦
堤麗斗選手はプロデビュー会見において「子供の頃からプロで戦うのが夢だった。世界チャンピオンになるのは通過点で、究極的には世界で一番強いボクサーになりたい」と抱負を語っている。これは単なる世界王座獲得にとどまらず、PFP(パウンド・フォー・パウンド)、すなわち「階級を超えた世界最強ボクサー」の称号を目指す高い志を表している。
堤選手のプロ転向とデビュー戦については、記者会見で「最終的な目標はPFP1位」と明言するなど、大きな野望を持っていることがうかがえる。ニューヨークデビュー戦に向けては「やれることを出し切って、悔いなく楽しみたい」と前向きなコメントを出している。
現時点ではデビュー戦以降の具体的な試合日程は発表されていないが、所属する志成プロモーションやサウジアラビアの「リヤド・シーズン」プロジェクトが全面的にバックアップしていることから、今後も国内外の大舞台で継続して試合が組まれる可能性が高い。A級ライセンスを活かして、数戦で地域タイトルや世界ランク入りを果たすシナリオも十分に考えられる。
堤選手は井上尚弥選手とのスパーリング経験もあり、日本のトップファイターからも技術を学ぶ環境にある。
今後はプロでの経験を積みながら、世界レベルで戦える実力を磨いていくことになるだろう。
まとめ:日本ボクシング界に現れた超新星
堤麗斗選手はまさに日本ボクシング界の「超新星」と呼ぶにふさわしい存在だ。
アマチュアでの圧倒的な戦績、史上3人目となるA級ライセンス取得、ニューヨーク・タイムズスクエアでのデビュー、リング誌とのアンバサダー契約、サウジアラビアからの熱烈なラブコールなど、デビュー前にして既に異例づくめの経歴を持つ。
特筆すべきは、その才能と潜在能力が国内外から高く評価されていることだ。
井上尚弥選手以来の「デビュー前から期待感を抱かせる逸材」と言われており、アマチュア大会では出場したほぼすべての試合で優勝という驚異的な成績を残している。日本人ボクサーとしてデビュー前からニューヨークでの試合が決まり世界的権威のあるリング誌と契約するのは前代未聞であり、まさに異例中の異例と言える。
彼の進化と成長次第では、間違いなく世界チャンピオンの座に到達し、さらには世界ボクシング界を驚かせるような偉業を成し遂げる可能性を秘めている。ボクシングファンにとって、堤麗斗選手の今後のキャリアは大いに期待が持てるものであり、彼がどのようなビッグファイトを繰り広げていくのか今から胸が躍る思いだ。
5月2日のニューヨークデビュー戦を皮切りに、堤麗斗選手がどのような活躍を見せるのか。日本ボクシング界の新たな旗手として、その一挙手一投足に世界中のファンの視線が注がれている。「アマチュア実績が井上尚弥選手をも上回る新星」との声も上がるほどの期待を背負った堤選手が、プロの世界でどこまで上り詰めるのか、今後の活躍から目が離せない。
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