こんにちは、Ebiちゃんです。
整形外科で5年、大学トレーニングジムで5年、そして少年サッカーチームや社会人ラグビーチームでの
トレーナー経験を持つ私が、今回は「産後の手首痛」について詳しく解説します。
日本スポーツ協会アスレティックトレーナーと健康運動指導士の資格を活かし、科学的根拠に基づいた情報をお届けします。
産後の手首痛の実態
産後に手首の痛みを経験するのはあなただけではありません。実は多くのママが同じ悩みを抱えています。
研究によると、産後女性の約35.2%が手や手首の痛みを経験しており、
初産婦では約48.9%、経産婦でも約24.9%と高い割合で発症しています。
特に痛みが出やすいのは産後1〜2ヶ月の時期でこの時期は赤ちゃんの体重が増加する一方で、
まだ自分で頭を支えることができないため、ママの手首への負担が特に大きくなります。
痛みが生じやすい部位は「橈骨茎状突起(とうこつけいじょうとっき)」と呼ばれる手首の親指側の出っ張った部分や
橈骨手根関節、母指の付け根の関節などが多く、両手に症状が出ることも少なくありません。
研究によると、痛みを訴える部位として橈骨茎状突起が約59.4%と最も多いことがわかっています。
なぜ産後に手首が痛むのか?
ホルモンバランスの変化
妊娠中から産後にかけて、リラキシンやエストロゲンなどのホルモンバランスが大きく変動します。
これらのホルモンは関節を緩める作用があり、手首の安定性が低下することで痛みが生じやすくなります。
「マミーサム」とも呼ばれる腱鞘炎
産後の手首痛の多くは「ドケルバン腱鞘炎」と呼ばれる症状で
「マミーサム(ママの親指)」や「ベビーリスト」などの愛称もあります。
これは親指を動かす腱とその周りの腱鞘に炎症が起き、痛みや腫れを引き起こす状態です。
私がトレーナーとして産後女性のリハビリに携わった経験からも、産後の腱鞘炎はダントツで多い症状の一つでした。
新しい命を育てる喜びの中で、静かに進行するこの症状に気づかないまま悪化させてしまうケースが少なくありません。
育児動作による過剰な負担
赤ちゃんを抱っこする際、多くのママは親指を外側に開きながら手首を内側に曲げる姿勢をとります。
この姿勢が繰り返されることで特定の腱に負担がかかり、炎症を引き起こします。
研究では、赤ちゃんが頭を支えられるようになる前(産後3ヶ月頃)までに症状が
最も強くなるケースが多いことがわかっています。
疲労と休息不足
産後は睡眠不足や体力の消耗など、体の回復が追いつかない状態が続きがちです。
この状態で繰り返し手首に負担をかけることで、痛みが発生・悪化しやすくなります。
手首の痛みが出やすい育児動作と改善法
産後の手首痛を予防・改善するためには、日常の育児動作を見直すことが非常に重要です。
ここでは、私の整形外科での経験と以前勤務していた病院の助産師さんからの
専門的な指導内容も踏まえて、具体的な改善策をご紹介します。
抱っこの正しい姿勢と手首への負担軽減法
【問題点】 赤ちゃんの頭や背中を支えようと、手首を極端に曲げたり、親指に負担をかけすぎたりしています。
【改善策】
- 抱っこの際は腕全体で赤ちゃんの体重を支えましょう
- 手のひら全体を使い、親指だけに力を入れないようにします
- 赤ちゃんの体を自分の体に近づけて抱き、腕の力を分散させます
授乳時の適切なポジションと手首のサポート
【問題点】 長時間の授乳で同じ姿勢を続けると、手首に大きな負担がかかります。
【改善策】
- 授乳クッションを活用し、赤ちゃんの体重を支える
- 手首が極端に曲がった状態を避ける
- 定期的に姿勢を変えて、同じ部位への負担を分散させる
- 授乳中も手首を意識的にリラックスさせる
おむつ交換時の手首の使い方
【問題点】 おむつ交換時に赤ちゃんの足を持ち上げる動作で、手首を過度に使用しています。
【改善策】
- 赤ちゃんの両足首を一緒に軽く握り、腕全体の力を使って持ち上げる
- おむつ交換台の高さを調整し、体に負担のない姿勢を保つ
- 可能であれば前腕全体を使って赤ちゃんの下半身を支える
抱っこひもの選び方と正しい装着方法
【問題点】 不適切な抱っこひもの使用は、手首だけでなく肩や腰にも負担がかかります。
【改善策】
- 腰ベルトがしっかりしたタイプを選び、赤ちゃんの体重を分散させる
- 肩ストラップの長さを適切に調整し、赤ちゃんが低すぎる位置にならないようにする
- 抱っこひもを装着する際は、手首に負担をかけない方法を意識する
これらの改善策は、私が産科・整形外科併設の病院で働いていた際に
助産師さんが産後の女性に日常的に指導していた内容と同じです。
医療現場でも実践されているこれらの方法は、多くの産後ママの痛みを軽減するのに役立っています。
専門家おすすめの産後手首痛予防・改善エクササイズ
手首のストレッチ
基本のストレッチ
- 片方の腕を前に伸ばし、手のひらを上に向ける
- もう片方の手で指先を軽く引き、手首を伸ばす
- 15-30秒キープし、反対側も同様に行う
- 次に手のひらを下に向け、同じように行う

親指のストレッチ
- 親指を軽く握り、ゆっくりと円を描くように回す
- 時計回りと反時計回りに各10回ずつ行う
手首と前腕の筋力強化エクササイズ
リストカール
- 前腕を机や椅子の上に置き、手首を机や椅子から出す
- 軽いタオルやペットボトルを手に持つ
- 手首を上下に動かす(10-15回×2セット)

親指強化エクササイズ
- 軽いボールやタオルを親指と他の4本の指で軽く握る
- 5-10秒間保持し、リラックスする
- 10回×2セット行う
日常生活に取り入れやすいセルフケア
- お風呂上がりの温かいうちに、手首をゆっくり回す
- 家事の合間に短時間でもストレッチを行う
- 痛みがある時は無理をせず、アイシングを行う(1回15分程度)
- 症状が重い時は、市販の手首サポーターを活用する
産後の手首痛リスクが高い人とは?
研究結果によると、以下のような方は産後の手首痛のリスクが高いことがわかっています:
- 高年初産婦:年齢が上がるほど発症率が高くなる傾向があります
- 過去に手首の痛みや腱鞘炎の経験がある方:既往がある場合、約49.1%が産後も症状を経験
- 長時間の授乳や抱っこが必要な赤ちゃんの母親
- 上の子どもがいる多子世帯の母親:抱っこやおんぶの頻度が増えるため
- スマートフォンなどのデバイスを多用する方:育児と別の要因が重なることで症状が悪化
これらに当てはまる方は、特に予防を意識することが大切です。
妊娠中から準備をしておくことで、産後の痛みを軽減できる可能性があります。
6. 医療機関を受診すべきタイミングと選び方
受診すべきタイミング
以下のような症状がある場合は、専門医への相談をおすすめします:
- 痛みが2週間以上続いている
- 日常生活や育児に支障をきたしている
- 腫れや熱感がある
- 手のしびれや感覚の変化がある
- 指が動かしにくい
選ぶべき診療科
- 整形外科:手や手首の痛みを専門的に診察
- リハビリテーション科:適切な運動療法を処方
- 産婦人科との連携:産後の体調全般に配慮した治療を受けられる
理想的なのは、産婦人科と整形外科が連携している医療機関です。
私が以前勤務していた病院では、産婦人科と整形外科が併設されておりドクターと助産師さんが密に連携することで
腱鞘炎と診断された産後の患者さんにスムーズに対応できていました。
このような連携があると産後特有の体の変化を考慮した治療が受けられるため、回復も早くなる傾向があります。
初診時に伝えるべきポイント
- いつから症状が始まったか
- どんな動作で痛みが強くなるか
- 産後何ヶ月か、授乳方法
- 日常的な育児スタイル(抱っこひもの使用頻度など)
- 過去の手首の痛みの経験
産後の手首痛と共に過ごす工夫
サポーター・装具の効果的な使用法
- 家事や育児の動作が多い時間帯にサポーターを装着する
- 就寝時にサポーターをつけると、無意識の動きによる痛みを防げる
- サポーターは強く締めすぎず、血行を妨げない程度に調整する
家事・育児の工夫
- 赤ちゃんを寝かせる時は、抱っこから徐々に下ろすようにする
- 洗濯物は一度にたくさん持たず、小分けにして運ぶ
- 調理は包丁を使う時間を減らし、切った野菜やカット済み食材を活用
- 掃除は握力を使わない道具(持ち手の太いモップなど)を選ぶ
家族のサポートを上手に得る方法
痛みを我慢せず、家族に伝えることが大切です。特に以下のようなサポートを依頼しましょう
- 重い物の持ち運び
- お風呂上がりの赤ちゃんの抱っこ
- 授乳後の赤ちゃんを寝かせる作業
- 手首を休める時間の確保
まとめ
産後の手首痛は、多くのママが経験する一般的な症状です。
初産婦の約半数、経産婦の約4分の1が経験するこの痛みは特に産後1〜2ヶ月に発症しやすく
適切なケアを行わないと長期化することもあります。
最も大切なのは、痛みを我慢しないこと。
多くの女性が「産後だから仕方ない」と諦めてしまいがちですが、早期に対処することで症状の悪化を防げます。
痛みを感じたら、遠慮せずに医療機関に相談しましょう。
特に産後健診などの機会を活用して、正直に症状を伝えることが大切です。
正しい抱っこの姿勢や育児動作の工夫、適切なストレッチと筋力トレーニング、そして必要に応じた医療機関の受診により、多くの場合は改善が期待できます。幸いなことに、近年は産後の身体トラブルへの理解も深まってきており、専門的なケアを受けやすくなっています。
私自身も5歳の娘と4歳の息子を育てながら、トレーナーとしての知識を活かして手首の痛みを管理してきました。
辛い時期もありましたが、少しずつ改善していくことは必ず可能です。
この大変な時期を乗り越え、痛みのない育児生活を送れるよう、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
何か質問があれば、いつでもブログのコメント欄やSNSでお気軽にご連絡ください。
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