8年間の現場経験と2児の父として伝えたいこと
夏の到来とともに、お子さんのスポーツ活動での熱中症リスクが急激に高まります。
私はアスレティックトレーナーとして8年間、整形外科、大学トレーニングジム
少年サッカーチームなど様々な現場で子どもたちの安全管理に携わってきました。
そして現在、5歳の娘と4歳の息子を持つ父親として
専門知識と親心の両方から熱中症対策の重要性を日々実感しています。
今年8月には妻と娘が高知のよさこい祭りに踊り子として参加予定で
気温35℃を超える過酷な環境での対策を真剣に検討しています。
この記事では、環境省や文部科学省、日本スポーツ協会の最新ガイドラインに基づきながら
現場での実体験を交えて、本当に効果的な熱中症対策をお伝えします。
熱中症の基礎知識:なぜ子どもは大人より危険なのか
医学的根拠に基づく重症度分類
熱中症は症状の重篤度によって、Ⅰ度(軽症)からⅢ度(重症)まで分類されます。
環境省の分類によると、以下のような特徴があります。
Ⅰ度(軽症)
- めまい、立ちくらみ(熱失神)
- 筋肉のこむら返り(熱けいれん)
- 適切な冷却と水分補給で改善可能
Ⅱ度(中等症)
- 頭痛、吐き気、倦怠感
- 体がぐったりして力が入らない状態(熱疲労)
- 水分摂取が困難な場合は医療機関での治療が必要
Ⅲ度(重症)
- 意識障害、全身けいれん
- 体温の著しい上昇
- 肝腎機能異常など重篤な臓器障害のリスク
子どもが熱中症になりやすい生理学的理由
私が現場で最も注意深く観察しているのは、子どもと大人の体温調節機能の違いです。
子どもは以下の特徴により、成人よりも熱中症リスクが約3倍高いとされています。
- 体温調節機能の未発達:汗腺の発達が不十分で、効率的な発汗ができない
- 体表面積と体重の比率:体重に対する体表面積が大きく、外気温の影響を受けやすい
- 水分代謝の特徴:体重に占める水分割合が高く、脱水症状が急速に進行する
少年サッカーチームでの指導経験では、同じ環境で練習していても
小学校低学年の選手ほど早く疲労症状を示すことを何度も確認してきました。
科学的根拠に基づく予防策の3本柱
1. 環境要因への対策:WBGT値の活用
熱中症予防で最も重要なのは、客観的な環境評価です。
気温だけでなく、湿度、輻射熱、風速を総合的に評価するWBGT(湿球黒球温度)値が国際的に推奨されています。
- 31℃以上:運動は原則中止
- 28-31℃:厳重警戒(激しい運動は中止)
- 25-28℃:警戒(積極的に休憩を取る)
- 21-25℃:注意(適宜水分補給)
私がトレーナーとして現場で使用している簡易WBGT測定器は約5,000円で購入でき
スポーツ指導者や保護者にとって必須アイテムだと考えています。
2. 個人要因への対策:暑熱順化の重要性
様々なスポーツ科学文献を読んできましたが、「暑熱順化」ほど軽視されがちで重要な概念はありません。
これは暑い環境に段階的に身体を慣らすプロセスで、約1-2週間かけて実施します。
暑熱順化のメカニズム
- 発汗開始温度の低下
- 発汗量の増加と塩分濃度の適正化
- 血液量の増加による循環機能向上
- 深部体温上昇の抑制
よさこい祭りに向けて、娘の暑熱順化プログラムを7月から開始予定です。
具体的には、室温を28℃程度に設定した部屋で軽い運動を15分から始め、徐々に時間と強度を上げていく計画です。
3. 行動要因への対策:戦略的水分補給
水分補給は「のどが渇いてから」では遅すぎます。
私が現場で指導している水分補給戦略は以下の通りです。
運動前(1-2時間前)
- 体重1kgあたり5-7mlの水分摂取
- アイソトニック飲料(体液と同じ浸透圧)が効果的
運動中(15-20分おき)
- 1回150-250mlの少量頻回摂取
- ハイポトニック飲料(低浸透圧)で素早い吸収を促進
運動後(2時間以内)
- 体重減少量の150%の水分補給
- 失われた電解質の補充が重要

効果的な熱中症対策グッズの選び方
冷却グッズ:科学的効果と実用性の両立
市場には数多くの冷却グッズが出回っていますが、医学的根拠に基づいて選択することが重要です。
人体には「冷却ポイント」と呼ばれる効果的な冷却部位があります。
最も効果的な冷却部位
- 首(頸動脈)
- 脇の下(腋窩動脈)
- 足の付け根(大腿動脈)
これらの部位は皮膚表面に太い血管が走っており、冷却効果が全身に素早く伝わります。
私が少年サッカーチームで常備している瞬間冷却パックは、緊急時にこれらの部位を狙い撃ちできる優れものです。
推奨商品:ザムスト アイスバッグ首用

特に首部位の冷却において、私が最も信頼を置いているのが「ザムスト アイスバッグ首用」です。
医療用品メーカーとして定評のあるザムストが開発したこの製品は、以下の特徴があります:
- 解剖学的設計:首の曲線に完全フィットし、頸動脈を効率的に冷却
- 安全性:医療現場で使用される基準をクリアした素材
- 利便性:氷と水を入れるだけで、15-20分間の持続冷却が可能
- 再利用性:洗浄して繰り返し使用でき、ランニングコストが優秀
現場での使用感として、従来の汎用アイスパックと比較して冷却効果が約30%向上し
固定も容易で子どもが嫌がることが少ないのが大きなメリットです。
実用的冷却グッズの評価
クールタオル 吸水ポリマータイプと冷感繊維タイプがありますが
持続性と安全性を考慮すると天然素材の冷感繊維製品をお勧めします。
化学合成ポリマーは肌の敏感な子どもには刺激となる可能性があります。
冷感ウェア 接触冷感機能付きのアンダーウェアは、確実に体感温度を2-3℃下げる効果があります。
ただし、吸汗速乾性とのバランスが重要で、ポリエステル100%よりもポリエステル・綿混紡素材の方が実用的です。
水分補給システムの構築
容器選択の科学
様々な水筒をテストしてきましたが、保冷性能と実用性のバランスが取れているのは
真空断熱ステンレス製で容量500-750mlの製品です。
保冷効果の持続時間(氷が残る時間)を実測した結果:
- ステンレス真空断熱:8-10時間
- アルミニウム製:4-6時間
- プラスチック製:2-3時間

スポーツドリンクの科学的選択法
日本スポーツ協会では「100mlあたり塩分0.1-0.2%、糖質4-8%」の飲料を推奨しています。
市販品の成分を比較すると:
- 糖質:7.0g/100ml
- 食塩相当量:0.12g/100ml(0.12%)
- 特徴:アイソトニック飲料、運動前に最適
- 糖質:4.6g/100ml
- 食塩相当量:0.10g/100ml(0.10%)
- 特徴:ハイポトニック飲料、運動中の水分補給に適している
運動時間30分未満なら水やお茶で十分ですが、30分を超える場合は2倍希釈したスポーツドリンク、
時間以上なら通常濃度のスポーツドリンクが科学的に推奨されます。
推奨商品:カバヤ食品 塩分チャージタブレット
液体での水分補給に加えて、私がチームトレーナーとして現場で重宝しているのが
「カバヤ食品 塩分チャージタブレット」です。
この製品の実用性は非常に高く、以下の特徴があります:
- 携帯性:小さなタブレット状で、ポケットやバッグに簡単収納
- 即効性:水と一緒に流し込むだけで素早い塩分・ミネラル補給
- 多機能性:塩分だけでなく、エネルギー(糖質)も同時補給可能
- 利便性:スポーツドリンクを持参できない場面でも水さえあれば対応可能
特に遠征先や練習試合では、大量のスポーツドリンクを持参するのが困難な場合があります。
そうした状況で、水とタブレットの組み合わせは非常に実用的でした。
1錠あたりの塩分量も適切で、過剰摂取のリスクも低く、子どもたちにも安心して使用できる点が評価できます。
トレーナーバッグには常に2-3個のタブレットを常備し、緊急時の塩分補給や
長時間の活動における補助的な栄養補給として活用しています。
よさこい祭り対策から学ぶ地域特性への対応
今年8月のよさこい祭り参加に向けて、高知特有の気候条件を分析しています。
高知の8月は気温35℃超、湿度80%という「危険」レベルの環境が予想されます。
地域イベント特有のリスク要因
- 長時間の屋外活動:踊りの練習から本番まで連続4-5時間
- 密集状態での運動:周囲からの輻射熱増加
- 興奮状態:祭りの高揚感で体調変化を見逃しやすい
5歳娘への特別配慮プラン
体重18kgの娘に対して、以下の対策を準備しています:
- 水分必要量:体重1kgあたり80ml×18kg=1,440ml/日
- 踊り用冷却ベスト:動きを妨げない薄型タイプ
- 専用スポーツドリンク:低糖質タイプを1.5倍希釈
- 緊急時の体温測定:非接触型体温計常備
私自身がトレーナーとしてスタンバイし、15分おきの体調チェックと水分補給を徹底する予定です。
応急処置:現場での実践的対応法
8年間の現場経験で学んだ最も重要なことは、「完璧な予防はあり得ない」ということです。
どれだけ対策を講じても、熱中症が発生する可能性はゼロにはなりません。
したがって、応急処置の知識と技術が不可欠です。
症状別の対応プロトコル
Ⅰ度(軽症)の対応
- 即座に運動中止、涼しい場所へ移動
- 衣服を緩め、首・脇・足の付け根を冷却
- 意識清明なら経口で水分補給(スポーツドリンク150-200ml)
- 15分以内に改善しなければ医療機関搬送を検討
Ⅱ度(中等症)の対応
- 救護班への連絡と医療機関搬送準備
- 全身冷却開始(氷嚢、冷タオルの交換)
- 吐き気がある場合は経口摂取禁止
- バイタルサイン監視(呼吸、脈拍、意識レベル)
Ⅲ度(重症)の対応
- 救急車要請と心肺蘇生法準備
- アイスバス法による積極的冷却(可能であれば)
- 30分以上の高体温持続は臓器障害リスクが急上昇
私が現場で使用している応急処置キットには
瞬間冷却パック×3個、体温計、スポーツドリンク、塩分チャージタブレットを常備しています。
筆者考察:科学的エビデンスと現場経験の融合
15年間のブロガー活動と8年間のトレーナー経験を通じて
熱中症対策において最も重要だと感じるのは「個別対応」の必要性です。
科学的ガイドラインは重要な指針ですが、それを画一的に適用するのではなく
一人ひとりの体質、体力、経験に応じて調整することが求められます。
例えば、WBGT値28℃で「厳重警戒」とされていても
十分な暑熱順化ができている高校生アスリートと、暑さに慣れていない小学生では、同じ環境での運動継続可否が大きく異なります。私が指導する際は、常に「最も脆弱な選手」を基準として判断しています。
また、保護者の立場から感じるのは、「完璧主義の落とし穴」です。
熱中症対策に関する情報が氾濫する中で、すべてを完璧に実行しようとして疲弊してしまうケースを多く見てきました。
重要なのは「継続可能な対策」を選択し、段階的に向上させていくことです。
科学的根拠に基づきながらも、現実的で実践しやすい対策を選択することが
結果的に子どもたちの安全を守ることにつながると確信しています。
よさこい祭りでの実践を通じて、さらなる知見を蓄積し、より良い対策法を皆さんと共有していきたいと考えています。
まとめ:子どもの安全を守るための総合戦略
熱中症対策は「予防に勝る治療なし」が鉄則です。
しかし、予防策だけでなく、発症時の迅速で適切な対応も同様に重要です。
優先すべき対策(重要度順)
- 環境評価(WBGT値測定)と活動調整
- 段階的な暑熱順化プログラム実施
- 戦略的水分・電解質補給
- 効果的な冷却システム構築
- 応急処置知識・技術の習得
親として、指導者として、そして専門家として
子どもたちが安全にスポーツを楽しめる環境を整えることが私たちの責務です。
科学的エビデンスに基づく正しい知識と、現場での実践的な対応力を両輪として、暑い夏を乗り切りましょう。
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参考文献・出典
- 環境省:熱中症予防情報サイト
- 文部科学省:学校教育活動等における熱中症事故の防止について(令和6年)
- 日本スポーツ協会:スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック
- 日本救急医学会:熱中症診療ガイドライン
執筆者情報

エビ(Ebi LIFE | えびちゃんの気ままライフ 運営)
- ウイスキー・ゲーム・スポーツ観戦愛好家
- 日本スポーツ協会アスレティックトレーナー
- 健康運動指導士
- トレーナー歴8年(整形外科5年、大学トレーニングジム5年、チームトレーナー4年)
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