井岡一翔選手とフェルナンド・マルティネスの再戦が
2025年5月11日に東京・大田区総合体育館で開催されることが正式に決定しました。
この一戦はWBA世界スーパーフライ級王座をかけた注目の再戦となります。
前回は2024年7月に対戦し、マルティネスが判定勝利を収めています。
何度も延期されてきた再戦がついに実現
この再戦は当初2024年12月31日の大晦日に予定されていましたが、
試合前日にマルティネスがインフルエンザに感染したことで急遽中止となっていました。
両陣営はその後も再戦実現に向けて交渉を続け、約4ヶ月の期間を置いての再戦が実現しました。
実は再戦のためにマルティネスはIBF王座を返上するという決断をしています。
WBC王者ジェシー・ロドリゲスとの統一戦を模索する動きもあった中、マルティネスは井岡との再戦を優先したのです。
両選手のプロフィールと前回対戦の総括
井岡一翔 選手
- 年齢/所属:36歳(2025年5月時点)/ 志成ジム所属
- 戦績:35戦31勝(16KO)3敗1分
- 階級変遷:ミニマム級→ライトフライ級→フライ級→スーパーフライ級
- 主な実績:2011年プロ7戦目でWBCミニマム級王座獲得を皮切りに、日本男子初の世界4階級制覇を達成。世界戦通算19戦(14勝4敗1分)
- タイトル歴:WBC世界ミニマム級王者、WBA世界ミニマム級王者(WBC・WBA統一王者)、WBA世界ライトフライ級王者、WBA世界フライ級王者、WBO世界スーパーフライ級王者、WBA世界スーパーフライ級王者
- ファイトスタイル:高度なテクニックを持つカウンターパンチャーで、「屈指の技巧派」と評されるボクサー。巧みなディフェンス技術とボディブローを武器に試合を組み立てるスタイルで、特に左ボディから相手の体力を奪う戦術を得意とする。
- 近年の活躍:2017年に一度引退するも約1年半後に復帰し4階級制覇を達成。ドニー・ニエテスとの再戦で判定勝ち、ジョシュア・フランコとのWBA王座統一戦は引き分けたが再戦で判定勝利。2023年大みそかにはホスベル・ペレスを6戦ぶりのKO勝利で破るなど攻撃面も評価された。
- リマッチの強さ:井岡はこれまで世界戦で3度のリマッチ(レベコ、ニエテス、フランコ)を経験し、いずれも初戦以上の内容で勝利している。試合を重ねるごとに対戦相手の特徴をつかみ、自ら戦術を調整できる適応力の高さは特筆に値する。
フェルナンド・マルティネス 選手
- 年齢/出身:33歳(2025年5月時点)/ アルゼンチン出身(愛称:「エル・プーマ」)
- 戦績:17戦17勝(9KO)無敗
- アマチュア経歴:2016年リオデジャネイロ五輪出場。アルゼンチン代表として国際大会で活躍し、ワールドシリーズ・オブ・ボクシングにも参戦した経験を持つ。
- プロキャリア:2017年プロデビュー。初戦から9試合はすべてアルゼンチンで行い、その後南アフリカでアテンコシ・ドゥメズウェニを11回TKOで下して頭角を現す。
- タイトル歴:元IBF世界スーパーフライ級王者、現WBA世界スーパーフライ級王者。2022年2月にIBF王座を獲得し、同年10月にアンカハスとのリマッチも制して2度防衛、2024年7月のWBA・IBF統一戦で井岡からWBA王座も奪取。その後指名挑戦者を回避してIBF王座は返上した。
- ファイトスタイル:前に出てプレッシャーをかけ続ける攻撃型のファイター。低い重心から前進しながら左右のフックを連打する戦法は驚異的で、特に左フックと右オーバーハンドは強打として知られる。
- 特筆すべき強み:スタミナとタフネスは群を抜いている。井岡との前戦では井岡の効果的なボディブローを何度も受けながらも12ラウンドを通して勢いが衰えることはなかった。アマチュア時代から培った経験と鋭い勘、そして闘志で相手を圧倒する。
前回対戦(2024年7月7日)の総括
井岡は序盤からマルティネスの猛攻に手を焼き、12ラウンドの激闘の末に3人のジャッジが揃って
マルティネスを支持する判定となりました。スコアは120-108、117-111、116-112でした。
井岡は持ち味の技術を活かせず、マルティネスの攻撃と手数に押されての敗戦でした。
特に序盤に井岡の左ボディがマルティネスにダメージを与えたものの、タフなマルティネスはそれを乗り越え、後半まで攻撃の手を緩めませんでした。
見どころと両選手の勝利への戦略
今回の見どころ
技巧派vs攻撃型の対決再び
この試合は世界最高峰の技巧派である井岡一翔と、常に前に出て攻撃を仕掛ける攻撃型ファイターのマルティネスとの対決という明確な構図が最大の見どころです。スタイルの異なる二人のチャンピオンの激突は、ボクシングの技術的な奥深さを堪能できる点で注目に値します。前回は攻撃型が技巧派を圧倒しましたが、再戦では両者がどのような修正や調整を加えてくるかが重要なポイントです。
井岡一翔のリマッチマスター振りを見られるか
井岡選手は「リマッチマスター」と称されるほど、再戦での強さに定評があります。
過去にフアン・カルロス・レベコ、ドニー・ニエテス、ジョシュア・フランコとの3度のリマッチを経験し、いずれも初戦以上の内容で勝利を収めています。特にニエテス戦では初戦の敗北から判定勝ちを収め、フランコ戦では初戦のドロー(引き分け)から判定勝ちへと結果を好転させました。今回の再戦でもその修正力が発揮されるかどうかは大きな見どころです。
歴史的快挙実現なるか
井岡選手が勝利すれば36歳での世界王座奪取となり、長谷川穂積の持つ日本記録(35歳9か月)を更新する快挙となります。ボクシングキャリア後半で再び頂点に立つという偉業達成のためのラストチャンスとも言える一戦で、その緊張感と集中力も注目ポイントとなるでしょう。
マルティネスのわずか10か月での再戦調整力
マルティネス選手にとっても初戦から約10か月での再戦となり、どのような戦術の修正を行うかも見どころです。
前回の勝利パターンを踏襲するのか、それとも井岡の修正を見越して新たな策を講じるのか。
無敗の王者としてのプライドと自信を武器に、より完成度の高い戦いを見せられるか注目されます。
地元アドバンテージvs前回完勝の自信
今回も日本での開催となるため、井岡選手には地元の声援という後押しがあります。
一方でマルティネスは前回の完勝で得た自信を持ち込んでくるはずです。こうした精神的な要素も試合展開に大きく影響する可能性があります。環境的に有利な井岡と、実績的に有利なマルティネス、どちらが精神的アドバンテージを活かせるかも見どころです。
井岡一翔の勝利戦略
井岡選手が勝利を収めるためには、前回の反省を活かした戦術修正が鍵を握ります。
初戦では相手の土俵である近距離戦に応じて打ち合いに終始したことが敗因の一つでした。今回は持ち味のカウンター主体の戦法に立ち返る可能性が高いでしょう。具体的には中間距離を維持しつつジャブやボディブローで牽制し、マルティネスの突進に合わせてカウンターを当てる展開が理想です。
特に重要なのは序盤のペース配分です。マルティネスは序盤から猛烈な攻撃を仕掛けてくるため、その時間帯をいかにうまく凌ぎつつポイントを失わないかが勝敗を分けるでしょう。前回のように相手の連打に付き合わず、クリーンヒットを意識したパンチを選択的に当てていくことが求められます。
井岡選手は特に得意の左ボディを武器に、マルティネスの体力と攻撃性をじわじわと削っていくことが勝利への道筋となるでしょう。前回もマルティネスのボディにダメージを与えていた場面がありましたが、今回はその効果をより引き出せるような打ち方とタイミングの工夫が必要です。
また、クリンチやフットワークを駆使して相手の連打を分断する戦術も有効でしょう。
「打たせずに打つ」井岡らしいクレバーなボクシングを実践できれば、判定戦を制する可能性が高まります。
マルティネスの勝利戦略
「1戦目以上の戦争をします」と語っているように、マルティネス選手は前回同様に序盤からアクセル全開で飛ばし
井岡選手に主導権を渡さない戦いを仕掛けてくることが予想されます。
マルティネスの強みは途絶えることのない攻撃力と驚異的なスタミナです。前回の試合でも井岡のボディブローで一時的に足が止まる場面はあったものの、すぐに回復して攻撃を再開する旺盛な体力を見せつけました。
この体力的優位性を活かし、12ラウンドを通じて手数で圧倒し続けることが勝利への鍵となるでしょう。
また、前回の対戦経験から井岡の動きやタイミングを分析し、より効果的なパンチングを心がけることも重要です。
特に井岡が得意とするカウンター戦に徹する可能性を踏まえ、フェイントを交えた攻撃やボディからアッパーにつなげるコンビネーションなど、より多彩な攻撃パターンを用意してくることも考えられます。
ジャッジに対する印象も重要なポイントとなるでしょう。積極的に前に出て攻撃するスタイルはジャッジに好印象を与えやすく、僅差の場合はマルティネスに有利に働く可能性があります。たとえ効果的なパンチでなくても、常に攻めの姿勢を見せることで心理的にもジャッジに圧力をかけることができるでしょう。
勝敗予想
両選手の戦術と調整次第で勝敗は大きく左右されますが、
様々な要素を総合的に分析すると、この一戦は接戦となる可能性が高いと予想されます。
マルティネス有利の観点
初戦の完勝による自信とモメンタムはマルティネスに大きなアドバンテージをもたらします。
年齢的にも33歳と井岡よりも3歳若く、全盛期のパフォーマンスを発揮しやすい状況です。
また、無敗のキャリアも精神的な強みとなります。
パワーと手数で圧倒するスタイルは、井岡のような技術派を苦しめる要素となります。
勝利すれば無敗のままWBA王座防衛となりキャリアの大きな節目となるため、モチベーションも最高潮で臨むでしょう。
井岡有利の観点
一方で井岡選手には過去のリマッチでの全勝実績があり、戦術の修正力に定評があります。
また地元日本での開催は心理的に大きな後押しとなるでしょう。
加えて、井岡選手はエリートボクサーとしての経験値が圧倒的に高く窮地に立たされても冷静に対応できる能力を持っています。初戦では不本意な内容だったことによる「リベンジ心」も原動力となるでしょう。
井岡選手の代名詞とも言えるボディブローは前回戦でもマルティネスにダメージを与えていました。
今回はこの武器をさらに効果的に使うための準備も整えてくるはずです。
最終予想
総合的に考えると、序盤はマルティネスが猛攻を仕掛け中盤から後半にかけて井岡が巻き返すという展開が予想されます。
ラウンドを重ねるにつれて井岡の経験とテクニックが活きてくる可能性が高く、特に終盤でのボディブローの蓄積が試合の流れを変える可能性があります。
両者の強みを考慮すると僅差の判定戦となる公算が大きく、そうなれば地元開催の井岡にやや有利との見方もできますがマルティネスの手数の多さとアグレッシブさも判定では強い武器となります。最終的には「井岡の接戦での判定勝ち」と予想しますが、それは決して簡単な勝利ではなく、これまでのキャリアで最も厳しい戦いの一つとなるでしょう。
試合の視聴方法と今後の展望
視聴方法
本イベント「LIFETIME BOXING FIGHTS」はABEMAのボクシングチャンネルにて独占生中継される予定です。
地上波テレビや他の配信サービスでの放送予定はないため、この一戦を見るにはABEMAへの登録が必須となります。
ABEMAでは無料会員登録をするだけで視聴可能ですが、より快適に観戦したい方はABEMAプレミアム(月額1,080円税込)への加入がおすすめです。プレミアム会員になると広告なしで視聴できるほか、放送中の追っかけ再生や2台まで同時視聴が可能になります。また、見逃し配信も広告なしで視聴できるメリットがあります。
視聴方法は非常に簡単で、スマートフォン、タブレット、PCからABEMAアプリやWebサイトにアクセスするだけです。
さらに、テレビの大画面で観戦したい場合は、Amazon Fire TVやChromecast、Apple TVなどのストリーミングデバイスや対応するスマートテレビを使用すれば、臨場感あふれる試合観戦が可能です。
試合時間については、5月11日の午後(開場予定15:00頃、試合開始16:00頃)から開始し、メインイベントの井岡VSマルティネス戦は夜の部(20:00以降)になる見込みです。ABEMAは大会全体を通して中継しますので、アンダーカードの試合からメインイベントまで余すことなく楽しめます。
試合後の展望 – スーパーフライ級の激動の情勢
勝者の今後は他団体王者との統一戦が期待されます。
現在の同級では、WBC&リング誌王者のジェシー・”バム”・ロドリゲス(21戦21勝14KO)が頭角を現しています。
最新情報によると、ロドリゲスは2025年夏にWBO王者プメレレ・カフーとの統一戦に臨む予定です。
この階級の状況は目まぐるしく変化しており井岡vsマルティネス戦の勝者は、ロドリゲスvsカフー戦の勝者との対戦という大きな統一戦の可能性も出てきました。25歳のロドリゲスは昨年11月にはWBCタイトル防衛戦でペドロ・ゲバラを3ラウンドでKO勝利しており、その強さは折り紙付きです。
また注目すべき展開として、WBA&WBCフライ級統一王者の寺地拳四朗選手(26戦25勝16KO・1敗)は1階級上のスーパーフライ級でも井岡選手との日本人対決に意欲を見せており、井岡選手が勝利すれば実現する可能性も出てきました。
敗者側も含め、この試合結果はスーパーフライ級の今後の勢力図を大きく左右する一戦となるでしょう。
まとめ:注目のリベンジマッチ
井岡一翔とフェルナンド・マルティネスの再戦は、単なるタイトルマッチを超えた意味を持ちます。
技術と経験で上回る井岡が、パワーと若さで上回るマルティネスの猛攻を制することができるか。日本ボクシング界のレジェンドが見せる意地と無敗の王者の強さ、5月11日の大田区総合体育館でその答えが出ることになります。
私の視点からも年齢による衰えをどう補うかという
ベテラン選手特有の課題と戦略的修正力という井岡の強みが噛み合うかどうかが興味深い一戦です。
ボクシングファンであれば見逃せないマッチアップとなるでしょう。
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