2025年5月9日公開
執筆者:Ebiちゃん(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー・健康運動指導士)
次戦決定:5月11日、ハイメ・アルボルダとの対決
堤駿斗選手の次戦が2025年5月11日に東京・大田区総合体育館で開催される
「LIFETIME BOXING FIGHTS27」で行われることが決定しました。
対戦相手はパナマ出身のハイメ・アルボルダ選手で、ノンタイトル10回戦、133ポンド契約での対戦となります。
この試合はWBA世界スーパーフライ級王座をかけたフェルナンド・マルティネス対井岡一翔の試合の
セミファイナルとして行われる注目の一戦です。
専門家として: アスレティックトレーナーの視点から見ると、試合間隔が約4か月半と適切な準備期間が確保されており、
コンディション調整の面では好環境といえます。ただし、連続した試合で体の消耗も懸念されるため回復と強化のバランスが鍵となるでしょう。
5月11日試合情報
- 日時:2025年5月11日(日)
- 会場:東京・大田区総合体育館
- 対戦カード:堤駿斗 vs ハイメ・アルボルダ(パナマ)
- 試合形式:ノンタイトル10回戦、133ポンド契約
- チケット料金:アリーナVIP席110,000円/アリーナRS席55,000円/アリーナS席33,000円/スタンドA席11,000円/スタンドB席6,600円
堤駿斗のプロフィールと輝かしい実績

堤駿斗選手は1999年7月12日生まれ、千葉県千葉市出身の25歳です。
極真空手やキックボクシングを経て小学5年でボクシングを始め、中学2年からボクシングに専念しました。
那須川天心選手とは幼なじみとして知られています。
アマチュア時代には習志野高校で高校6冠(フライ級、バンタム級)を達成。
2016年には高校2年生で52kg級に出場したAIBA世界ユース選手権で優勝し日本人男子初の快挙として注目を集めました。
全日本選手権(バンタム級、フェザー級)でも優勝するなどアマチュア時代に13冠達成し
全国タイトルを獲得した輝かしい実績の持ち主です。
こうした実績からアマチュア時代からプロへの転向が期待されていましたが、
東京五輪出場はならず、2021年に東洋大学を卒業後、2022年4月に井岡一翔選手らが所属する
志成ボクシングジムに入門しプロ転向を発表しました。
専門家として: これだけの実績を持つアマチュアボクサーがプロに転向した場合、技術面での適応は早いものの
プロのリング運びやラウンド配分の戦術はまた別物です。堤選手は適応能力が高く、アマチュア時代の基礎力をプロでも存分に活かしています。
堤駿斗選手基本データ
- 名前:堤駿斗(つつみ はやと)
- 生年月日:1999年7月12日(25歳)
- 出身地:千葉県千葉市
- 所属:志成ボクシングジム
- マネジメント:トラロック・エンターテインメント
- 戦績:6戦6勝(3KO)
プロデビューから現在までの戦績
堤選手は2022年7月13日、元OPBF東洋太平洋フェザー級5位のジョン・ジェミノ選手(フィリピン)を相手にプロデビュー。8回判定3-0(79-73、80-72×2)で白星スタートを切りました。
続く2022年12月31日の2戦目では、元東洋太平洋スーパーバンタム級王者ペテ・アポリナル選手(フィリピン)
と対戦し、8回判定3-0で勝利。
注目すべきは3戦目(2023年5月31日)での活躍です。
同級3位ジョー・サンティシマ選手(フィリピン)との東洋太平洋フェザー級タイトル決定戦に出場し、
デビューからわずか3戦目で東洋太平洋王座を獲得。日本男子史上最速記録を樹立しました。
4戦目(2023年12月31日)では、元WBA同級王者ルイス・モンシオン・ベンチャーラ選手(ドミニカ)に
3回2分14秒TKOでプロ初KO勝ちを飾りました。
5戦目(2024年5月17日)は元WBAバンタム級王者アンセルモ・モレノ選手(パナマ)との対戦で3回KO勝ち。
そして6戦目(2024年12月31日)ではWBA世界スーパーフェザー級挑戦者決定戦として
元王者レネ・アルバラード選手(ニカラグア)と対戦し、8回1分55秒TKO勝ちを収めました。
この勝利により、WBA同級王座ラモン・ローチ・ジュニア選手への挑戦権を獲得し、
現在6戦全勝(3KO)という輝かしい成績を残しています。
専門家として: プロ6戦にして元世界王者を含む強豪と対戦し全勝というのは驚異的なペースです。
特に注目すべきは、試合を重ねるごとにKO率が上がっている点。
これは技術的な成熟と共に、プロリングでの経験値が着実に積み上げられている証拠といえます。
堤駿斗の主な戦績タイムライン
- アマチュア時代:高校6冠、AIBA世界ユース選手権優勝(日本人初)など13冠
- 2022年7月13日:プロデビュー、ジョン・ジェミノに判定勝ち
- 2022年12月31日:ペテ・アポリナルに判定勝ち
- 2023年5月31日:ジョー・サンティシマに判定勝ち、OPBF東洋太平洋フェザー級王座獲得(日本男子最速3戦目)
- 2023年12月31日:ルイス・モンシオン・ベンチャーラをTKO勝ち
- 2024年5月17日:アンセルモ・モレノをKO勝ち
- 2024年12月31日:レネ・アルバラードをTKO勝ち、WBA世界スーパーフェザー級挑戦権獲得
- 2025年5月11日:ハイメ・アルボルダ戦(予定)
次戦の対戦相手・ハイメ・アルボルダとは
ハイメ・アルボルダ選手はパナマ出身の実力者で、WBA世界スーパー・フェザー級15位にランクされています。
堅実なテクニックと豊富な経験を持つベテランファイターです。
アルボルダ選手の特徴は、スピードとカウンターパンチに長けていることです。
パナマボクサー特有の緩急を活かした巧みなリング運びを得意とし、これまでに世界レベルの選手との対戦経験も豊富です。
堤選手にとっては単なるランク外の選手との対戦ではなく、世界のトップ15に入る選手との試合となります。
このレベルの選手に勝利することで、世界ランキングをさらに上げ世界タイトル戦に直結する重要な一戦となるでしょう。
専門家として: パナマ出身のボクサーは一般的に技術的に洗練されており、特に上半身の動きを活かした防御と正確なカウンターを得意とします。堤選手の強みである左フックと一貫した攻撃が、アルボルダ選手の経験と技術に対してどう作用するかが見どころです。
モレノ戦とその波紋 – キャリアの分岐点
キャリアを順調に積み重ねてきた堤選手でしたが、2024年4月17日のアンセルモ・モレノ戦では思わぬ事態が発生しました。前日計量でフェザー級リミット(57.15kg)を1.6kg超過する58.75kgを記録。
2時間の猶予を与えられ再計量を行いましたが、わずか50gしか減量できず計量失格となってしまいました。
両陣営の協議の結果、試合当日の午前10時に計量を行い、61.12kg以内であれば試合成立という条件で合意。
当日計量では60.95kgでパスし、試合は実施されました。
結果は3回2分45秒KO勝ちと圧勝でしたが、前日計量の失格により日本ボクシングコミッション(JBC)から
6カ月のライセンス停止処分を受けることとなりました。
この出来事は、堤選手のキャリアにおける大きな分岐点となりました。
どんな理由があっても計量失敗は格闘技の基本ルールを守れなかったことであり、
スポーツマンシップの観点からも看過できない問題でした。
堤選手自身もこのことを深く受け止め、試合後のリングインタビューでは相手陣営や関係者
ファンに向けて真摯に謝罪しています。
一流のスポーツ選手は失敗を深く考察し、二度と繰り返さないよう取り組む姿勢が重要です。
堤選手はこの経験から学び、精神的にも成長。
その結果が6戦目での元王者アルバラードに対するTKO勝利として結実したといえるでしょう。
また、この出来事をきっかけにスーパーフェザー級(59kg)への階級変更を決断し
体重管理の負担が軽減されたことで本来の実力を発揮できるようになりました。
専門家として: 減量に苦しむボクサーにとって、適切な階級選択は競技寿命を左右する重要な決断です。
計量失敗を経験したことで階級を上げた判断は、長期的キャリアを考慮すると正しい選択だったといえます。
体重増加によるパワーアップも、ここ最近の試合で明らかになっています。
強さの秘密とボクシングスタイル
堤選手の強さの秘訣は、卓越したテクニックと精神面の強さにあります。
特に右ストレートや左フックのパンチ力が際立っており、相手のリズムを崩す「引きカウンター」(右フックのスウェーバックからの左カウンター)など高度な戦術を駆使できることが特徴です。
ボクシングスタイルとしては、井上尚弥選手の体格を大きくしたような印象があり
攻撃、防御、フットワークなど全てのスキルが非常に高いレベルでまとまっています。
スピードと正確さを兼ね備えたパンチ、冷静な距離感の調整、
そして状況判断の良さは、将来ほぼ確実に世界王者になる素質を感じさせます。
練習環境も充実しています。直近の重要試合前にはラスベガスで強化合宿(10月上旬~11月中旬)を敢行し
国内でも試合までに約150ラウンドものスパーリングを積むなど、徹底した準備を行っています。
栄養面でも1日700gもの白米を中心に摂取して免疫力と体力の増強に努めており、
科学的なアプローチで身体づくりを行っています。
また、IBF・L・フライ級王者フェリックス・アルバラード選手が所属する環境で、
“世界王者養成”で知られるイスマエル・サラス氏からも指導を受けるなど、
世界レベルの指導陣のもとで鍛錬を続けています。
専門家として: 栄養面では炭水化物の摂取量が多いですが、これはトレーニング量が非常に多いボクサーにとっては理にかなっています。特に練習量が多い時期には糖質の十分な摂取が疲労回復とパフォーマンス維持に不可欠です。白米中心のシンプルな栄養戦略は、日本人アスリートの体質に合っているといえます。
兄弟で世界制覇へ:堤駿斗と堤麗斗のボクシング界における意義
堤駿斗選手の活躍を語る上で、近年注目を集めている弟・堤麗斗選手の存在も見逃せません。
千葉県出身の堤兄弟は、日本ボクシング界でも稀に見る才能を持つ「ボクシングファミリー」として
新たな歴史を刻みつつあります。
堤麗斗選手(22歳)は兄と同様に輝かしいアマチュア実績を持ち、アマチュア9冠、世界ユース選手権金メダルを獲得。
驚異の通算59勝2敗という驚異的な勝率を誇っています。
特筆すべきは、堤兄弟が日本史上初の「兄弟での世界ユース選手権金メダリスト」を達成しており、
兄弟揃って規格外の才能を有していることです。
2025年5月2日には、ニューヨーク・タイムズスクエアで
プロデビュー戦を飾るという前代未聞の舞台で初陣を迎えました。
これは日本人ボクサーとして異例中の異例のデビュー舞台であり、
「日本ボクシング界過去最大の破格のデビュー戦」と評されています。
デビュー戦では対戦相手のレヴェール・ウィッティントン選手(米国)に判定勝ちし、鮮烈なプロデビューを飾りました。
兄の駿斗選手がオーソドックス(右構え)であるのに対し、
麗斗選手はサウスポー(左構え)というスタイルの違いもあります。
堤麗斗選手の戦闘スタイルは被弾を極力避ける「ディフェンス重視」である一方、
兄の駿斗選手は「ストレート系の強打を好み、豪快な連打で相手を崩す」という対照的な特徴を持ちます。
駿斗選手のスーパーフェザー級での活躍と、麗斗選手のデビューという新たな展開により
日本ボクシング界は「堤兄弟」という新たな切り口で世界に挑む体制が整いつつあります。亀田三兄弟(興毅・大毅・和毅)や井上兄弟(尚弥・拓真)に続く兄弟世界チャンピオンとなることも十分に視野に入ってきました。
「兄貴が獲れなかったタイトルを獲りたい」と語る麗斗選手の存在は、駿斗選手にとっても大きな刺激となっています。
5月11日のアルボルダ戦に向けた意欲も、弟の活躍によってさらに高まっていることでしょう。
世界タイトルへの道と今後の展望
2024年12月のアルバラード戦の勝利により、
堤選手はWBA同級王座ラモン・ローチ・ジュニア選手(米国)への挑戦権を獲得しています。
ローチ・ジュニア選手は3月に試合を予定しているため、5月11日のアルボルダ戦で勝利すれば
年内にも世界タイトル戦が実現する可能性が高まります。
堤選手自身は「世界というよりも、一戦一戦強い相手を倒して階段を上がっていく」と謙虚に語りつつも
「今年はこの階級で強い選手に1つずつ勝っていきたい」と年内の世界戦実現を視野に入れています。
WBAスーパーフェザー級では現在、ラモン・ローチ・ジュニア選手が王者として君臨していますが、
この階級は非常に競争が激しく、世界トップレベルの選手が多数存在します。
特に注目すべきは、同階級のWBO王者エマヌエル・ナバレッテとの対戦の可能性です。
ナバレッテはメキシコ出身の強打者で、両者のスタイルが噛み合えば、非常に見応えのある激闘が期待できるでしょう。
また、将来的にはライト級(61.2kg)への階級アップも視野に入れられます。
ライト級はWBA王者ジャーボンタ・デービス、WBC王者シャクール・スティーブンソン、
IBF王者ワシル・ロマチェンコ、WBO王者キーショーン・デービスなど超強豪が揃う難関ディビジョンですが、
堤選手の成長ぶりを見れば、そこにチャレンジする姿も十分見てみたいところです。
まずは目前のアルボルダ戦での説得力ある勝利が、次のステップへの重要な鍵となります。
専門家として: 世界タイトル挑戦への道筋としては理想的なルートを進んでいます。
WBAの挑戦権を既に獲得しながらも、5月の一戦を挟むことで世界戦に向けた調整期間と経験値を稼げる点は戦略的に優れています。世界戦を見据えた戦い方の研鑽にも繋がるでしょう。
試合の観戦方法と情報
5月11日の試合は東京・大田区総合体育館で開催されます。
チケットはアリーナVIP席110,000円、アリーナRS席55,000円、アリーナS席33,000円、スタンドA席11,000円、
スタンドB席6,600円の各種価格帯が用意されています。
テレビ中継やオンライン配信も予定されていますので、会場に足を運べない方でも観戦が可能です。
マルティネス対井岡のタイトルマッチとセットになった注目カードですので、早めのチケット購入をお勧めします。
専門家として: 生観戦の魅力は、テレビでは伝わりにくいパンチの音や選手の呼吸、会場の空気感を直接体感できる点です。特にアリーナS席以上ではリングサイドに近く、選手の表情や足さばきなど細部まで観察できるため、技術的な側面を楽しみたい方にはおすすめです。
ファンや専門家からの評価
堤選手はリング上だけでなく、ファンや専門家からの評価も非常に高いものがあります。
元WBA王者アルバラード選手も「堤のパンチは的確。スピードと多彩な打ち合いで非常に難しい相手だった。世界チャンピオンになる素質がある」と称賛しています。
また、元2階級制覇王者の畑山隆則さんは練習公開取材で堤選手のジャブや左フックを「いいパンチ」「切れるパンチ」
と評価するなど、多くの専門家が堤選手の将来性を高く評価しています。
ボクシング専門誌『ナンバー』も若手ホープの中でも「堤駿斗の評価は極めて高い。日本人初の世界ユース優勝など輝かしい実績を持ち、国内最速3戦目でOPBF王座を獲得した」と報じており、プロ入り前から注目されていました。
専門家として: ボクシングの目利きとして知られる畑山さんが評価する「切れるパンチ」は、単なるパワーだけでなく、タイミングとフォームの正確さが組み合わさった結果です。これは生まれ持った才能とアマチュア時代からの膨大な練習量に裏打ちされたものであり、簡単に習得できる技術ではありません。
まとめ:堤駿斗の世界への挑戦と日本ボクシングの未来
圧倒的なアマチュア実績から早くも世界に挑む堤駿斗選手。
その才能と努力は日本ボクシング界の未来を担う存在として多くの期待を集めています。
「リングの中で自分の強さを証明するつもり」という堤選手の言葉には、世界を目指す強い決意が感じられます。
体重超過による停止処分からも見事に再起し、現在は階級を上げてパワーも増した堤選手。
5月11日のアルボルダ戦を経て、年内にも世界タイトル挑戦が現実味を帯びてきました。
日本ボクシング界の新星の活躍から目が離せません。
さらに、弟の堤麗斗選手の活躍も加わり「堤兄弟」として日本ボクシング界に新たな歴史を刻む可能性も見えてきました。
兄弟での世界制覇という夢の実現に向けて、まずは堤駿斗選手の5月11日の試合が重要な一歩となります。
専門家として: ボクシングキャリアにおいて、プロ入り3年目での世界タイトル挑戦は極めて早いペースといえます。
しかし、堤選手のアマチュア時代の豊富な経験と高いレベルでの試合経験を考慮すると、決して時期尚早とはいえません。
むしろ、ピークパフォーマンスを迎える前に世界の舞台で経験を積むことは、長期的なキャリア構築において理想的なタイミングかもしれません。そして何より、体重超過という挫折を乗り越え、自らを律する精神力を身につけた堤選手には、世界王者になる資質が十分備わっていると感じます。技術、フィジカル、そして精神面の成長が揃った今、彼の挑戦に大きな期待が寄せられています。
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この記事の内容は2025年5月9日時点の情報に基づいています。最新情報は公式発表をご確認ください。
執筆者:Ebiちゃん(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー・健康運動指導士)
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