【ミラノ・コルティナ五輪2026】髙木美帆の身体能力を徹底分析|アスレティックトレーナーが解説する世界記録保持者の強さの秘密

ミラノ・コルティナ五輪2026に向けた高木美帆選手の身体能力インフォグラフィック。爆発的な下肢筋力・効率的な蹴り出し角度・高いVO2max・股関節と足関節の柔軟性など、アスレティックトレーナー視点で世界記録保持者の強さの秘密を図解 スポーツ
スピードスケート界の絶対女王・高木美帆選手の強さを、JSPO公認アスレティックトレーナーがバイオメカニクスの観点から徹底解剖。通算10個のメダルを支える4つの身体的特徴を図解しています。

2026年2月6日〜22日、イタリアで開催されたミラノ・コルティナ冬季オリンピック。
スピードスケート女子の高木美帆選手の戦いをリアルタイムで追っていた方も多かったのではないでしょうか。
4度目のオリンピックで悲願の1500m金メダルを目指した挑戦、そして銅メダル3個で積み上げた通算10個という前人未到の記録——今回はその成果をアスレティックトレーナーの視点から解説します。

髙木美帆選手は「164cm・58kgという決して恵まれているとは言えない体格」にもかかわらず、ミラノ五輪でも銅メダル3個を獲得し、オリンピック通算10個のメダル(金2・銀4・銅4)という夏冬を通じた日本女子最多記録を樹立しました。
その強さの秘密は、「爆発的な下肢筋力による蹴り出しパワー」「高い最大酸素摂取量(VO2max)に裏打ちされた持久力」「効率的な蹴り出し角度を実現する股関節・足関節の柔軟性」という3つの身体能力の高次元での融合にあります。

私は日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)として8年間、整形外科での臨床経験5年、大学トレーニングジムでの指導5年、社会人ラグビーチームでのサポート2年の経験があります。この記事では、髙木美帆選手の身体能力をバイオメカニクス、運動生理学、スポーツ科学の観点から専門的に分析し、なぜ彼女が他のトップ選手を上回る成績を残せるのかを解説します。


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髙木美帆選手の基本データとプロフィール

基本情報

項目詳細
生年月日1994年5月22日
年齢31歳(2026年2月時点)
身長164cm
体重58kg
出身地北海道中川郡幕別町
所属TOKIOインカラミ
得意種目500m、1000m、1500m、チームパシュート
保有記録女子1500m世界記録(1分49秒83)

スポーツ経歴

髙木選手は5歳からスケートを始め、同時に7歳からはサッカーにも取り組みました。中学時代には「とかち帯広フットボールクラブ」に所属し、北海道選抜メンバーとしてナショナルトレセン女子U-15合宿に参加するほどの実力者でした。

このサッカー経験が、後のスピードスケートでの成功に大きく貢献しています。サッカーで培った下肢の筋力、バランス感覚、持久力は、スピードスケートに不可欠な要素であり、幼少期からのマルチスポーツ経験が彼女の身体能力の基盤を形成しました。

オリンピック出場歴

大会年齢出場種目成績
バンクーバー201015歳1000m、1500m、チームパシュート入賞なし
平昌201823歳1000m、1500m、3000m、チームパシュート金1、銀1、銅1
北京202227歳500m、1000m、1500m、3000m、チームパシュート金1、銀3
ミラノ・コルティナ202631歳500m、1000m、1500m、チームパシュート銅3(通算10個)

2010年バンクーバー五輪では、スピードスケート史上最年少となる15歳で日本代表に選出されました。その後、平昌五輪ではチームパシュートで金メダル、1500mで銀メダル、1000mで銅メダルを獲得。北京五輪では主将を務め、1000mで五輪新記録(1分13秒19)を樹立して金メダルを獲得し、冬季五輪1大会で4つのメダル獲得という日本人選手史上初の快挙を達成しました。


ミラノ・コルティナ2026に向けた最新の成績

2024-25シーズンの活躍

髙木選手は2024-25シーズンも圧倒的な強さを見せています。

ワールドカップ通算勝利数

種目勝利数備考
1000m11勝
1500m23勝W杯4連覇中
3000m1勝
合計36勝日本歴代最多記録

2025年1月のワールドカップでは、通算35勝目を挙げて日本歴代最多記録を更新。その後も勝利を重ね、通算36勝まで記録を伸ばしています。特に1500mでは4年連続のW杯総合優勝という偉業を達成しています。

2025年世界距離別選手権

2025年3月15日、ノルウェー・ハーマルで開催された世界距離別スピードスケート選手権大会では、女子1000mで1分14秒75を記録して優勝。個人種目で日本女子初の連覇を達成しました。

ミラノ・コルティナ五輪での結果

4度目のオリンピックを迎えた髙木選手の最大の目標は、世界記録を持ちながらまだ獲得できていない1500mの金メダルでした。しかし蓋を開けてみれば、500m・1000m・チームパシュートで銅メダルを獲得する一方、本命の1500mは6位に終わるという結果に。それでも銅メダル3個を積み上げ、オリンピック通算10個という夏冬を通じた日本女子最多記録を樹立しました。


髙木美帆と他のトップ選手との比較

体格比較

髙木選手は身長164cm、体重58kgと、スピードスケート選手としては決して大柄ではありません。世界のトップ選手と比較してみましょう。

選手名国籍身長体重得意種目
髙木美帆日本164cm58kg1000m、1500m
イレイン・ブストオランダ175cm68kg1500m、3000m
ヨイ・ベーネオランダ170cm65kg1500m
ブリタニー・ボウアメリカ175cm70kg1000m、1500m

髙木選手は、ライバルたちより10cm以上身長が低く、体重も10kg以上軽いにもかかわらず、世界記録を保持し、W杯で36勝を挙げています。

この事実は、身体能力の最適化が体格差を覆す力を持つことを示しています。

主要記録の比較

種目髙木美帆世界記録
1000m1分13秒19(五輪記録)1分11秒61(ブリタニー・ボウ/米国)+1.58秒
1500m1分49秒83(世界記録)
3000m3分56秒62(日本記録)3分52秒02+4.60秒

1500mでは世界記録保持者として他の選手を圧倒しており、1000mでも五輪記録保持者です。複数の距離で世界トップレベルの記録を持つ「オールラウンダー」として、髙木選手は稀有な存在といえます。


JSPOアスレティックトレーナー視点での専門的分析

ここからは、アスレティックトレーナーとしての専門知識を活用して、髙木美帆選手の身体能力を科学的に分析します。専門的な内容ですが、なるべく分かりやすく解説していきます。

【専門分析①】爆発的な下肢筋力による蹴り出しパワー

スピードスケートで最も重要な身体能力の一つが、下肢筋力です。
特に大腿四頭筋、ハムストリングス、大臀筋といった筋群が蹴り出しのパワーを生み出します。

髙木選手の太ももの特徴

髙木選手は身長164cm、体重58kgと一見すると標準的な体型に見えますが、その下半身は一般女性とはまったく異なります。特に太ももの筋肉は非常に発達しており、「足が閉じられないほど太い」と表現されるほどです。

これはスピードスケート選手に共通する特徴で、男子500mの新濱立也選手も「スタートの姿勢をとると下半身に別人のような筋肉が現れる」と評されています。

蹴り出しの仕組み

スピードスケートの動作は、シンプルに言えば「片足で滑る」→「氷を蹴って加速する」の繰り返しです。

スポーツ科学の研究によると、速く滑れる選手と普通の選手の違いは「蹴る回数」ではなく、1回の蹴りでどれだけ前に進めるかにあります。つまり、効率よく力を伝えられるかどうかがポイントです。

上手い選手は、氷を真下ではなく斜め横に蹴ることで、より効率的に推進力を得ています。
氷の上は摩擦が少ないので、真下に蹴っても滑ってしまいます。
横方向に蹴ることで、しっかりと前に進む力に変換できるのです。

髙木選手の下肢筋力の特徴

  • 太ももの前側(大腿四頭筋)の爆発力
    • 膝を一気に伸ばして氷を蹴るパワーの源
    • 1回の蹴りで大きく前に進める
    • 小柄でも大きな推進力を生み出せる秘密
  • 太ももの裏側(ハムストリングス)とのバランス
    • 前と裏の筋肉バランスが取れていることが重要
    • バランスが良いと怪我しにくく、長く活躍できる
  • お尻の筋肉(大臀筋)の強さ
    • 脚を後ろに蹴り出す力を生む
    • サッカー経験で鍛えられた筋力が土台
    • 低い姿勢をキープしながら強く蹴れる

研究でわかっていること

スポーツ科学の研究によると、世界トップクラスの選手は蹴り出しの角度がより水平に近いことがわかっています。
これにより、同じ力でもより効率的に前に進めるのです。

髙木選手は164cmという身長のハンディを、この「効率的な蹴り方」でカバーしています。
背の高い選手は脚が長い分有利に見えますが、髙木選手は筋力と技術を組み合わせることで、同等以上の効率を実現しています。


【専門分析②】高い最大酸素摂取量(VO2max)に裏打ちされた持久力

スピードスケート、特に1500m以上の中長距離種目では、持久力が勝敗を分ける重要な要素になります。

最大酸素摂取量(VO2max)とは

簡単に言うと、「体がどれだけ酸素を取り込めるか」を示す数値です。
この数値が高いほど、長時間の運動でもバテにくくなります。
マラソン選手や自転車選手など、持久系アスリートで特に重要な指標です。

種目によって必要な能力が違う

種目競技時間主に必要な能力
500m約35-40秒瞬発力(短距離ダッシュ型)
1000m約1分10-15秒瞬発力+持久力(両方必要)
1500m約1分50秒〜2分持久力+瞬発力(両方必要)
3000m約4分持久力が中心

髙木選手が得意とする1000mと1500mは、瞬発力と持久力の両方が求められる最も難しい種目です。
短距離選手のようなパワーと、長距離選手のようなスタミナ、どちらも高いレベルで持っていないと勝てません。

髙木選手の持久力の特徴

  • 酸素を取り込む能力が高い
    • 世界トップレベルの持久力を持っている
    • 1500mで世界記録を出せるのは、この能力のおかげ
  • レース後半でもスピードが落ちない
    • 1500mでは約3周半を滑走
    • 普通の選手は後半に失速するが、髙木選手は粘れる
    • 「疲れにくい体」を持っている証拠
  • 回復が早い
    • 複数種目に出場しても高いパフォーマンスを維持
    • 北京五輪では5種目に出場し4つのメダルを獲得
    • 1日に複数レースをこなせる体力

なぜこれが重要なのか

酸素を効率よく使える体を持っていると、「長く全力で動ける」「試合後の回復が速い」「疲れが来るのが遅い」というメリットがあります。

髙木選手が500mから1500mまで幅広い種目で世界トップの成績を残せるのは、この「疲れにくく、回復が早い体」があるからこそです。


【専門分析③】効率的な蹴り出し角度を実現する柔軟性

スピードスケートでは、関節の柔軟性がパフォーマンスに大きく影響します。
特に股関節、膝関節、足関節の可動域が重要です。

クラップスケートと柔軟性の関係

現在のスピードスケートでは、1998年長野五輪以降主流となった「クラップスケート(スラップスケート)」が使用されています。このスケートは、かかと部分でブレードが離れる構造になっており、従来のスケートより足首の可動範囲が広がります。

クラップスケートの利点:

  • キック後もブレードが氷に接している時間が長い
  • 足首の可動範囲が広がり、疲れにくい
  • ブレードと氷の接触時間が長いため、蹴る力のロスが軽減

髙木選手の柔軟性の特徴

  • 股関節の可動域
    • 深い前傾姿勢を維持できる
    • 蹴り出し時の脚の開き角度が大きい
    • 大腿筋膜張筋、中殿筋の柔軟性が高い
  • 足関節の背屈可動域
    • クラップスケートの特性を最大限に活用
    • 蹴り出し時の力の伝達効率が高い
    • アキレス腱、下腿三頭筋の柔軟性
  • 体幹の安定性と柔軟性の両立
    • 低い姿勢でも体幹が安定
    • 左右の重心移動がスムーズ
    • 腸腰筋、腰方形筋の協調的な働き

効率よく蹴るために柔軟性が必要

「どれだけ無駄なく力を前進に変えられるか」が重要です。そのためには、膝や股関節がしっかり曲がること、そして足首が柔らかいことが欠かせません。

世界トップ選手に共通する動き

研究によると、金メダルを取るような選手には共通点があります:

  • 上半身と下半身が連動している
    • 腕の振りと脚の蹴りがタイミングよく合っている
    • 体全体で効率的に力を生み出している
  • 腰の角度をコントロールできる
    • 骨盤の傾きを意識して調整できる
    • これにより上半身と下半身がスムーズにつながる
  • カーブと直線で蹴り方を変えられる
    • スケートリンクはカーブがあるため、同じ蹴り方では速く滑れない
    • 左右で蹴り方を微調整できる器用さが必要

髙木選手は、これらの技術を高いレベルで身につけており、164cmという身長のハンディを柔軟性と技術で補っています。


髙木美帆選手の強さを支える3つの要因まとめ

アスレティックトレーナーの視点から分析した結果、髙木美帆選手の強さを支える要因は以下の3つに集約されます。

要因① 爆発的な下肢筋力

  • 大腿四頭筋、ハムストリングス、大臀筋の高度な発達
  • 1ストロークあたりの仕事量が大きい
  • 小柄な体格でも大きな推進力を生み出す蹴り出しパワー

要因② 高い持久力(VO2max)

  • 1000mから3000mまで幅広い種目で世界トップレベル
  • レース後半でもスピードが落ちない乳酸耐性
  • 複数種目に出場しても高いパフォーマンスを維持する回復力

要因③ 効率的な蹴り出しを可能にする柔軟性

  • 股関節、足関節の広い可動域
  • クラップスケートの特性を最大限に活用
  • 上半身と下半身の連動による効率的な滑走

これらの身体能力が高次元で融合することで、髙木選手は身長164cm・体重58kgという体格でありながら、女子1500m世界記録を樹立し、W杯通算36勝という日本歴代最多記録を達成しています。


team GOLDの取り組み

チーム結成の背景

髙木選手は2023年5月、自らのスポンサー企業などの支援を得て「team GOLD」を立ち上げました。
前ナショナルチームヘッドコーチのヨハン・デビット氏をコーチに迎え、独自の強化体制を構築しています。

チームには、2018年平昌五輪女子チームパシュート金メダリストの佐藤綾乃選手(ANA)、男子500mの実力者・村上右磨選手(高堂建設)も参加。さらに、オランダのサネ・イントホフら外国人選手も加入し、国際色豊かなチームとなっています。

ヨハン・デビットコーチとの連携

ヨハン・デビット氏は、2015年から日本ナショナルチームのヘッドコーチとして髙木選手を指導してきた人物です。
髙木選手が平昌五輪、北京五輪でメダルを量産した時期と重なります。

デビットコーチは髙木選手について、「ワールドレコードは持っているけど、もっと速く滑れるんじゃないか。コンディションもいいし、チームを作るにあたって責任感がすごい生まれていて、モチベーションも高い」と評価しています。

トレーニング内容

team GOLDでは、以下のようなトレーニングを行っています:

  1. 自転車トレーニング: 約2時間で約70kmを走行。有酸素能力と下肢の持久力を強化
  2. 筋力トレーニング: バーベルスクワットなどで下肢筋群を総合的に鍛錬
  3. 氷上練習: ミラノ五輪に向けた技術の最終調整

2026年1月5日には長野市エムウェーブでの練習が公開され、髙木選手は「あの場で戦えることは自分にとって大切なもの。最高の戦いができるように仕上げたい」と4度目の五輪への抱負を語りました。


ミラノ・コルティナ五輪での戦いと結果

ミラノ・コルティナ2026のスピードスケート競技は、2026年2月7日(土)から2月21日(土)まで、ミラノ・スピードスケート・スタジアムで行われました。

種目別の結果

種目日程髙木美帆の結果金メダル
女子500m2月15日🥉銅メダル(37秒27)フェムケ・コク(オランダ)五輪記録36秒49
女子1000m2月13日頃🥉銅メダルユッタ・レールダム(オランダ)五輪記録更新
女子チームパシュート2月17日🥉銅メダルカナダ
女子1500m2月20日6位(1分54秒86)アントワネット・ライプマ=デ・ヨング(オランダ)

各レースの振り返り

女子500m(銅メダル)

2月15日に行われた女子500mでは、北京五輪での銀メダルに続き2大会連続でのメダル獲得となる銅メダルを獲得。37秒27を記録しました。金はフェムケ・コク(オランダ)の五輪記録36秒49、銀もユッタ・レールダム(オランダ)と、表彰台はオランダ勢が独占しました。

女子1000m(銅メダル)

この種目では3大会連続の表彰台。北京で自ら樹立した五輪記録(1分13秒19)は、金メダルのユッタ・レールダム(オランダ)によって更新されましたが、髙木選手は粘り強く銅メダルを獲得しました。日本女子歴代最多となる通算8個目のオリンピックメダルとなりました。

女子チームパシュート(銅メダル)

チームパシュートの3位決定戦では、佐藤綾乃、堀川桃香、野明花菜とともに出場。アメリカを3.5秒差で退け銅メダルを獲得しました。平昌2018金・北京2022銀に続く3大会連続の表彰台で、チームの底力を示しました。このメダルで髙木選手のオリンピック通算メダルは10個となり、夏冬を通じた日本女子最多記録を樹立。冬季オリンピックで10個のメダルを獲得した初めての日本選手となりました。

女子1500m(6位)

最大の目標だった1500mは、1分54秒86で6位に終わりました。最終15組に登場し、世界記録保持者として序盤から攻めた滑りを見せましたが、ラスト1周で失速。金メダルはオランダのアントワネット・ライプマ=デ・ヨングでした。平昌・北京と2大会連続銀メダルだったこの種目で、4度目の五輪でも悲願の金には届きませんでした。レース後、髙木選手は「今は心境を自分の言葉で表現するのは難しい。いろんな感情を味わった大会だった」と語りました。

ミラノ五輪での成果

項目内容
今大会メダル数銅メダル3個
オリンピック通算10個(金2・銀4・銅4)
達成した記録夏冬通じた日本女子最多、冬季五輪通算10個初の日本選手

結果から見えた髙木美帆の課題と強さ

1500mで金メダルに届かなかった要因

アスレティックトレーナーの視点から見ると、1500mでの6位という結果には「ラスト1周での失速」という課題が見えます。髙木選手は世界記録保持者として序盤から攻めましたが、最後の400mで体力が尽きてしまった可能性があります。

1500mは約2分弱で滑る種目で、「全力ダッシュ」と「持久走」の中間のような難しさがあります。序盤から飛ばすと、ゴール前で足が動かなくなるリスクがあるのです。

3種目で表彰台に立てた身体能力の高さ

一方で、500m・1000m・チームパシュートの3種目でメダルを獲得したことは、彼女の幅広い身体能力の高さを証明しています。500mの瞬発系から、チームパシュートの長距離持久系まで表彰台に立てるのは、前述した「爆発的な下肢筋力」「高いVO2max」「効率的な柔軟性」がすべて高次元で融合しているからこそです。

31歳での前人未到の記録

髙木選手は2026年2月時点で31歳。スピードスケート選手としては「ベテラン」とも言える年齢で、なおも4種目に出場し3つのメダルを獲得しました。年齢とともに衰えるとされる無酸素性能力(瞬発力)が500mのメダルとして結実していることは、トレーニングとコンディショニングの高い水準を示しています。

彼女の挑戦は「年齢に関係なく、正しいトレーニングと身体管理で高いパフォーマンスを維持できる」ということを証明しています。


まとめ|身体能力の最適化が生む、夏冬日本女子最多10個のメダル

髙木美帆選手は、164cm・58kgという決して恵まれた体格ではないにもかかわらず、ミラノ・コルティナ2026でも銅メダル3個を獲得し、オリンピック通算10個のメダル(金2・銀4・銅4)という夏冬通じた日本女子最多記録を打ち立てました。

強さの秘密

  • 爆発的な下肢筋力による蹴り出しパワー
    • 大腿四頭筋、ハムストリングス、大臀筋の高度な発達
    • 1ストロークあたりの仕事量が大きい
    • 身長のハンディを筋力でカバー
  • 高い最大酸素摂取量(VO2max)に裏打ちされた持久力
    • 500mから1500mまで世界トップレベル
    • レース後半でもスピードが落ちない
    • 複数種目でも高いパフォーマンスを維持
  • 効率的な蹴り出し角度を実現する柔軟性
    • 股関節、足関節の広い可動域
    • クラップスケートの特性を最大限に活用
    • 上半身と下半身の連動

悲願の1500m金メダルには届かなかったが

「最大の目標」だった1500mは6位に終わりました。平昌・北京と2大会続けて銀メダル、そして今大会は6位——世界記録保持者としてこれだけ長く1種目の頂点を追い続けた選手は、スピードスケート史でも稀な存在です。

しかし、4度のオリンピックで積み上げた通算10個というメダル数は、どんな選手でも成し遂げられるものではありません。「小さな体で世界を変えた選手」として、髙木美帆選手の名は日本スポーツ史に永遠に刻まれます。


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執筆者情報

えびちゃんのアバター

エビナ(Ebiちゃん)

  • 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
  • 健康運動指導士
  • トレーナー歴8年(整形外科5年、大学トレーニングジム5年、社会人ラグビー2年)
  • 専門分野: アスレティックトレーニング、スポーツ科学、バイオメカニクス、運動生理学

ブログコンセプト: ウイスキー・ゲーム・スポーツ好きのアラサーパパブロガーのライフスタイルブログ。スポーツ記事では専門知識を活かした科学的で深い分析を提供しています。家族(妻、長女5歳、長男4歳)と共に、人生を楽しみながら情報発信中。


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注意事項: この記事の分析は、ミラノ・コルティナ2026終了時点(2026年2月)での公開情報と専門知識、最新のスポーツ科学研究に基づいています。


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